【新春対談 阪神・森下翔太×サントリー・高橋藍(3)】世界へ羽ばたく編~国を背負う意味 お金の話

[ 2026年1月1日 05:15 ]

スーツ姿でポーズを決めるサントリー・高橋藍(左)と阪神・森下 (撮影・後藤 大輝)
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(2)から続く

 高橋 イタリアで学んだことはたくさんあります。最初に言われたのは、「藍がどうしたいかだ」。仲間にご飯に誘われて、「誰々が行くなら俺も行くよ」みたいに返答したら、「いや、藍が行きたいか、イエスかノーだ」って言われて。日本人って誰かに合わせるみたいなところがあるじゃないですか。

 森下 日本人同士だと、コミュニケーションを取るため、一緒にご飯に行くというのはありますよね。

 高橋 監督とコミュニケーションを取る時も自分の意見を伝える選手がほとんどでした。意見をちゃんと言うべきだと、イタリアで学びました。

 森下 自分の意思を強く持つことは大事ですよね。

 高橋 24年のパリ五輪でもイタリアから学びました。準々決勝(※3)で対戦して2―0で迎えた第3セットにマッチポイントを握りながら大逆転負け。オリンピックでの1点の重みを痛感させられました。4年に1度ですから、そこに懸けるものが本当に大きい。他の国際大会とは比較できない雰囲気が、オリンピックにはあります。

 森下 野球は3月にWBC(※4)があります。そのプレッシャーは半端じゃないと思います。体がデカくてパワーがある人間が強いに決まっているのに、野球は日本人が勝って当たり前だと思われている。それって異常だと思うんですよ。実際、前回(※5)のあと、NPBで活躍した選手って少ないんじゃないですかね。重圧が大きい分、それぐらい達成感に浸ってしまう。大谷翔平さんだけは異次元でしたけど。

 高橋 やっぱり別格ですね。大谷さんは。

 森下 別格!

 高橋 パリ五輪ではメダルを逃しましたけど、物凄い数の人が試合を見てくれました。それも、日本だけじゃなく世界各国の方が。僕たちの戦いで、「救われました」、「ありがとう」という言葉をいただきました。励みになると同時に、国を背負う重圧と緊張感を持ってプレーできることに感謝しています。

 森下 野球はやっぱり日本、アジア圏、アメリカは盛り上がっているかもしれないですけど、世界的な目で見たらバレーボールの注目度は高いし、華のあるスポーツだと思います。オリンピックの話を聞くと、野球が正式競技じゃないので寂しさはあります。スポーツ界を盛り上げたいと思っているので、スポーツ選手のつながりをもっと広げたいと思っています。

 高橋 オリンピックの選手村には日本人だけの宿泊棟があったり、食事やトレーニングができる村外サポート施設もあるので、そこで他のアスリートと知り合えます。でも、意外とつながってはないですよ。

 森下 そっか…。オリンピックの緊張感の中で、ちょっとしゃべってインスタをフォローみたいなのはないのか。28年のロサンゼルス五輪(※6)で会いたいですね。

 高橋 是非、バレーボール勢が寝泊まりしているところに遊びに来てくださいね。

 森下 話は変わりますが、SVリーグの給料ってどうなんですか?

 高橋 上がってきていますけど、野球に比べたら…(笑い)。

 森下 高橋選手が一番もらっていますか?

(チームの広報担当者が苦笑い)

 高橋 いやいや、野球に比べたらまだまだなところはあります。これからもっと上げていきたいなというのはありますね。

 森下 野球なら1試合ごとに何打数何安打などと個人成績が出ますけど、バレーボールは、どんな成績がありますか?

 高橋 スパイクの決定率とか、レシーブの返球率とかですね。個人個人のアベレージがあって、それを超えたか超えていないかで、その日の調子の良しあしを判断する感じです。

 森下 なるほどね。例えば、相手のブロッカーが1枚しかいなかったらラッキーみたいなのが出てきそう。頼られる選手と、そうでない選手でも差が出るし、周囲に左右されることが多そう。野球だったら、ピッチャーとバッターが勝負した結果だけど。

 高橋 そうですね。確かに他の選手ありきというところがあるので。

 森下 周囲に左右されるのは結構嫌かも。それと、年俸交渉は選手自身がしますか?

 高橋 大学2年でイタリアへ行った時はエージェントが交渉をしてくれました。僕の場合は、基本的に代理人がチームと交渉して、金額面などを決めてくれます。バレーボールもプロ化が進んでいるので。

 森下 単年契約が多いですか?

 高橋 それは選手によって違いますね。複数年もあります。

 森下 年俸って、どうやって決まりますか?

 高橋 成績はもちろんですけど、集客力などもです。

 森下 野球の場合だと…。

(両チームの広報担当者がストップをかけて)この続きはプライベートの機会に。

 森下 今度、飲みに行きましょう。その際に裏話をやりましょう!

 高橋 是非、お願いします!

 (※3)8月5日に対戦し、日本は第1セットを25―20、第2セットを25―23で連取。第3セットの終盤に24―21とリードし、マッチポイントが3回あったが、その全てを取り逃し、3セットを奪われて敗退した。

 (※4)日本の入ったC組は3月5日に東京ドームで開幕。日本は6日の初戦で台湾と対戦する。

 (※5)日本は23年3月の第5回WBCで3大会ぶり3度目の優勝。1次ラウンドを4戦全勝で1位通過すると、準々決勝でイタリアを9―3、準決勝でメキシコを6―5、決勝戦で米国を3―2で破った。MVPは大谷翔平。

 (※6)23年10月の国際オリンピック委員会の総会において、野球とソフトボールなどが2028年ロサンゼルス五輪の追加競技として承認された。東京五輪以来、2大会ぶりの復帰。

 ◇森下 翔太(もりした・しょうた)2000年(平12)8月14日生まれ、神奈川県出身の25歳。東海大相模、中大を経て22年ドラフト1位で阪神入団。新人の23年はDeNAとの開幕戦で「6番・右翼」でデビュー。94試合で10本塁打、41打点。同年オリックスとの日本シリーズでは7打点の新人最多記録で日本一に貢献。25年は自身初の全試合出場で、いずれもリーグ2位となる23本塁打、89打点を記録。ベストナインとゴールデングラブ賞を初受賞した。1メートル82、93キロ。右投げ右打ち。

 ◇高橋 藍(たかはし・らん)2001年(平13)9月2日生まれ、京都市出身の24歳。小学2年の時、兄・塁(サントリー)の影響でバレーボールを始める。東山、日体大卒。東山3年時に春高バレーで優勝。日体大在学中の21年にイタリア1部パドバ加入。23年モンツァ移籍。24年からサントリー所属。20年日本代表初選出。21年東京五輪、24年パリ五輪8強。1メートル88、83キロ。アウトサイドヒッター。

 ≪緊張する藍を森下がリードする姿印象的≫

 【取材後記】1時間以上に及んだ豪華対談は最後まで盛り上がった。序盤は1学年上の森下が会話をリードし、緊張の面持ちだった高橋の表情をほぐしていったのが印象的だった。

 東京、パリ五輪に出場するなど世界大会の経験が豊富な高橋。話題が心構えや考え方に及ぶと“珍回答”を連発していた森下も真剣モードに入った。2人が語った「勝負の駆け引き」の部分は、野球とバレーボールをしている少年少女も是非参考にしてほしい。

 SNSが普及した現代。世界のトッププレーヤーの練習方法や技術が気軽に視聴できるようになっても、膝を突き合わせて会話をすれば、より心に落とし込めるはずだ。森下は本紙大阪本社版の元日付紙面に3年連続で登場。対談終了後、若虎は「凄く勉強になることが多かった。(対談を)やって良かった」と言ってくれた。それは記者冥利(みょうり)に尽きる言葉だった。 (石崎 祥平)

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