「強いと思ったら大間違いだ!」横浜も山梨学院も思考停止の「野球ロボット」は求めていない

[ 2025年12月2日 14:53 ]

ナインに言葉をかける山梨学院・吉田部長(右)
Photo By スポニチ

 記者は朝が怖い――。それは職業病かもしれない。

 他社の「ニュース」がネットに出ているかもしれない…と、毎朝、恐る恐るスマホを握る日々を送っている。担当するアマチュア野球のカテゴリーで他社が独自報道をしていれば、憂鬱(ゆううつ)な1日がスタート。その度に「もっと考えて取材計画を立てるべきだった…」と後悔する。

 独自情報を伝えるニュースには「考える力」が大事。考えて、考えて、考えた上で、記者ははじめてニュースに出会うことができると業務を通して学んだ。

 取材先の高校野球の現場においても「考える」ことが重要視されている。名門校とされる指導者たちは打った、投げたの結果そのものより「考える」ことに口を酸っぱくする。

 11月22日。横浜は練習試合で花巻東に1―0で競り勝った。秋季東北大会を制した明治神宮大会出場チームに対し、「自信になる1勝」かと思われたが、試合後の横浜・村田浩明監督に笑顔はなかった。

 記録に残らないミスは9回の守備だ。2死から四球で走者を許すと、二盗を許して一打同点のピンチを招いた。村田監督が引っかかっていたのは、一塁に釘付けすべき走者が簡単にスタートを切ったことだ。この場面における声かけによる準備の徹底、けん制などのケアがいかに重要か、指揮官から指摘される前に自分たちで気づいてほしかった。
 
 「あの場面で(走者警戒の)声が出なかったのはショックだった。ただの努力じゃない、意味のある努力をしないといけない」

 エース・織田の好投、東北屈指の強豪・花巻東を下したことも関係ない。公式戦で勝敗を分ける「気づき」を大事にするからこその言葉だった。

 この秋、関東大会を制した山梨学院も同じ思いを持つ。11月30日に行われた練習試合では10―9で関甲新学生リーグの松本大に打ち勝った。カテゴリーが上の大学生チームに勝利するも、試合後の吉田健人部長の表情は険しかった。4―0で迎えた5回に一挙6失点を招くことになった守備に着目していた。

 「自分たちが強いと思ったら大間違いだ。勝負は細かいところで決まる。選手が状況に応じて気づき、考える力が足りていない」

 5回に1点を返され、なお1死三塁の場面。ベンチの指示は「内野前進」だったが、二塁手は通常の前進守備よりも少し前に位置した。吉田部長は公式戦であれば発していただろう「三塁走者の足を考えれば、そこまで前進する必要はない」の声を飲み込み、選手たちが気づいて指摘することを待ったが、期待の声は響かない。すると、投手の横を転がった平凡な打球に二塁手のグラブは届かず、中前への適時打となった。ここからさらに4失点を許すビッグイニングとなった。

 「前進守備は1つじゃない。走者の足を考えて(守備位置を)アジャストしていく必要がある。選手が気づかなければ、ベンチが助けなければならない」

 山梨学院伝統の細かい野球。今夏で引退した梅村団主将の代は「細かい野球」に破壊力が加わり、今年の春夏甲子園出場、国民スポーツ大会初優勝の輝かしい成績を残した。これまで先輩たちが紡いだ伝統の野球を継ぐこと、それは山梨学院のユニホームに袖を通した者の使命。だからこそ、吉田部長はナインに「気づき」を求めた。

 甲子園優勝経験のある両校は言われたままに動く思考停止の「野球ロボット」は求めていない。社会で生きていく助けにもなる「考える力」を求めている。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

野球の2025年12月2日のニュース