【内田雅也の追球】空振りを奪える直球

[ 2025年11月12日 08:00 ]

中日との練習試合で1回を無失点に抑えた阪神・椎葉
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 阪神秋季キャンプの練習試合は中日相手に0―0で終わった。試合時間2時間13分。平日の昼間、春野総合運動公園野球場に集まったファンには物足りなかったか。

 阪神4安打、中日2安打。実戦から遠ざかり、貧打は否めない。ただ、阪神8人、中日7人の若い投手はよく投げた。

 阪神投手陣で目立ったのは直球で空振りを奪うシーンである。数えてみると、11個にのぼった。

 順に並べると、木下里都4個、工藤泰成1個、椎葉剛2個、津田淳哉3個、石黒佑弥1個。変化球で奪った空振りは5個。直球の威力を示す結果となった。対する中日投手陣が直球で奪った空振りは3個だけだった。

 椎葉は左打者の浜将乃介、尾田剛樹から続けて外角高め直球で空振り三振を奪った。ともに抜けたようなボール球で、狙ったコースかどうかは別として、力があった。

 昔話を思いだした。いわゆる暗黒時代に最後まで優勝を争った1992年、エースは左腕・仲田幸司だった。14勝をあげ、リーグ最多の三振194個を奪った。スライダーは確かに切れたが、軸は直球である。

 キャンプやシーズン中のブルペンでの投球練習中、右打者ひざ元を狙った直球が抜けて外角高めに外れる。制球難だった仲田は“しまった”という顔になる。

 そんな時、バッテリーコーチだった有田修三が「それでええんや」と指導していた。「下半身を使い、腕を振って高めに抜けた球は力がある。空振りを取れるぞ」。近鉄での現役時代、コンビを組んだ通算317勝の左腕・鈴木啓示の投球で得た経験談だろうか。仲田は実際、高め速球で空振りをよく奪っていた。

 左右を鏡映しにすれば、椎葉の高め速球にも当てはまる。ベンチに入らず、本部席から試合を見つめた監督・藤川球児も椎葉の直球をたたえた。「左バッターに対するアウトハイとか。踏み込みが強くいけてるから吹くような球になっていた」

 他にも名を挙げた津田は川上理偉を直球で3球すべて空振りの三振を奪った。石黒は直球で空振り1、外角低めの見逃し2の3三振を奪った。

 藤川は来季に向け「右の速球派リリーフの台頭」をあげている。すぐに来季と急がずとも、まずは力のある直球を投げていきたい。現役時代「火の玉ストレート」で空振りを奪った藤川の下で、投手王国の将来をみている。=敬称略= (編集委員)

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