【内田雅也の追球】「怪物」を降ろした後

[ 2025年6月21日 08:00 ]

交流戦   阪神1―2ソフトバンク ( 2025年6月20日    甲子園 )

<神・ソ>延長10回、及川から内野安打を放つ野村(撮影・亀井 直樹)  
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 1―1で延長に入った10回表先頭、阪神・及川雅貴が野村勇に投げた初球スライダーは一、二塁間にはじき返された。中野拓夢が飛びこんで好捕、一塁に好送球したが間一髪セーフとなった。内野安打である。

 今季、及川のスライダーが初めて安打された。NPB統計・分析サイト『翼』によると、及川の球種別成績でスライダーは30打数無安打だった。打たれたというほどではないが、この野村が決勝生還の走者となった。

 2死三塁となって伏兵の代打・石塚綜一郎に初球、外角直球を右中間二塁打されたのだった。

 ともに初球だと指摘するのは筋違いだろう。今季過去30試合、防御率0点台とよく投げてくれていた及川ではないか。敗戦投手を責められない。

 勝ちたかった。何しろ阪神は攻守ともによく食らいついた。守っては小幡竜平(1回)、近本光司(2回)、中野(10回)と美技が相次いだ。

 打線は今季6勝無敗、防御率1点台の難敵、リバン・モイネロによく食らいついていた。

 象徴的な打撃が5回裏、大山悠輔の同点打だった。2死一、二塁、ファウル3本で粘った8球目、外角に逃げながら沈んでいくチェンジアップに体勢低く食らいつき、二遊間をゴロで破った。中前適時打となった。

 この一打を含めモイネロから奪った8安打(すべて単打)のうち、実に5本を追い込まれてから放った。今季2ストライク後の被打率1割2分6厘だった「決め球」を打った価値は高い。こうして無四球でも5回まで101球を投げさせた。

 あの「怪物」江川卓が作新学院時代、甲子園に初登場した1973年の選抜大会を思う。準決勝で対戦する前、広島商監督・迫田穆成(よしあき)は「5回までに100球投げさせろ」と命じた。打者はよく選び、よく粘り、5回で104球を投げさせた。迫田はこの時点で「この試合、おまえたちの勝ちだ」と言い放った。実際、江川の連続無失点を139回で止め、2―1で倒した。

 モイネロもキューバ出身の「怪物」投手に違いない。ただ、今季の1試合平均投球数は106球。6回111球で降板させ、迫田が言った「勝ち」が見えた気がした。

 村上頌樹は初回の1失点で踏ん張っていた。12安打12残塁がむなしい。問題は「怪物」を降ろした後だった。 =敬称略=
 (編集委員)

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