DeNA20歳の「その0・1秒をけずり出せ」 「松尾ドリル」に記者は明るい未来を感じた

[ 2025年6月16日 08:00 ]

試合前練習で「ウォーターバック」を使用し「松尾ドリル」に取り組むDeNA・松尾
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 箱根駅伝で有名な東洋大陸上競技部長距離部門の過去のスローガンに、「その1秒をけずり出せ」がある。個人タイムが1秒短縮されれば、その集合体のタイム短縮が勝利に結びつくという考えだ。

 そしてDeNA。今季、先発出場しない日の試合前練習で、「その0・1秒をけずり出せ」に挑む女房役を目撃している。

 松尾汐恩。高卒入団3年目の弱冠20歳は、トレバー・バウアーとのコンビで、二盗を阻止する強肩ぶりを見せている。だが、当然今がキャリアのピークではない。松尾に「ドリル」を課す藤尾佳史パフォーマンスアナリストは、「向こう10年」第一線で活躍する長期的視野から、背番号5を育成している。

 松尾は二盗阻止のために捕球し、その前段で送球のため立ち上がったとき、一瞬浮く右足を地につけるまでに「0・2秒」を要することがある。送球の精度を高めるためにも、素早く右足を着地することは重要だ。

 だから「0・2秒台」という遅れは、盗塁阻止に響く。改善してタイムが常時0・1秒台になれば、松尾の盗塁阻止率は高値安定するし、習得した技術は簡単に衰えない。0・1秒勝負…。超瞬時の世界観だが、同氏はそれを松尾に説明し、松尾も理解している。

 例えて言えばタイムが0・25秒のときもあり、0・15秒のときもある。波がある。記者が藤尾氏に「0・1秒をけずり出す取り組みですね」と聞くと、同氏はうなずいた。

 ドリルでは、基本練習に瞬発系トレを課すことに加え、約3キロの重さの球体「ウオーターバック」を「シャドーピッチング」に似た動きで何度も抱えて繰り返す。一定に動かない水が入ったバックの負荷は、体幹を鍛え体の切れも増す。スピードも身につき継続すれば目標の常時「0・1秒台」も見えてくる。

 松尾は「うおっ~」と大声を発し、大粒の汗をかいてウオーターバックトレに取り組む。終えるとぐったり倒れ込むこともある。

 捕手の強肩を示す数値に二塁までの送球タイムがある。ドラフト候補捕手が、「タイムは1秒90です」などと話す記事を見たことのある方も多いだろう。

 松尾は「いま僕は自分の最新の二塁までの送球タイムは知りません。それより、動き出すときに浮く癖がある右足を修正し、0・1秒台を出し続けたい。もともと手の動きは速かった。でも足がうまく動かせなかった。藤尾さんと日々話しています。0・1秒台の安定で送球の精度も上がる」と声を弾ませる。

 大阪桐蔭時代から猛練習をしてきたが、0・1秒をけずり出す練習については「DeNAで知りました。ありがたい」と続けた。

 相川亮二ディフェンスチーフコーチは、「松尾の技術を向上させるためには、今はその動作を“けずる”しかない。だけどタイム計測するのは珍しい取り組み」と明かした。藤尾氏特有の取り組みがDeNAの「向こう10年」に直結している。

 勝つために0・1秒をけずり出す!東洋大と共通するフォア・ザ・チームへの精神「松尾ドリル」に明るい未来を感じずにはいられない。(記者コラム 大木 穂高)

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