MLB、歴史的低打率の原因は?投球100マイル越え、平均回転数の大幅アップ、短期間での新球習得…

[ 2024年7月16日 12:04 ]

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 メジャーの打率低下の原因はどこにあるのか。AP通信が投手の直球のスピード上昇、回転率アップとの因果関係について報じている。

 打率は4月までに・240、5月は・239で、1968年の・237以来の最低レベルだった。季節が春から夏に変わり、気温の上昇で打者がバットを振れてきたことも手伝い、6月は・246、7月は・250と上昇気配に転じたが、オールスター前のシーズン平均打率は・243で、2022年と同じ水準で1968年以来の低い数字だった。

 ロブ・マンフレッドコミッショナーは歴史的な「投高打低」状態について5月下旬「打率が少し下がっていた。ゲームのアクションを求めるならば、必ずしも良いことではない」と危機感を口にしていた。

 打率低下はメジャーだけの話ではない。今年のマイナーリーグの打率も・243。5年前は・256だっただけに急降下ともいえる。投手の球速の大幅アップが一因と考えられる。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「私がプレーしていた時には、100マイル(約160・9キロ)は見なかった。それが今では当たり前になっている」と証言する。

 今季のフォーシームの平均速度は94・2マイル(約151・6キロ)だが、2008年は91・1マイル(約146・6キロ)と約5キロ遅かった。さらに昨季は100マイル以上の投球が3880球あったが、2008年にはわずか214球だった。

 ピッチクロック導入のルール改正で試合時間は22年の3時間4分から23年は2時間40分、そして今年は2時間36分と短縮されている。チームごとの1試合平均得点は4・39で、昨年の4・62から微減している。球速だけではなく、投手の「レベル」が上がったことが要因の一つとしてある。

 ブレーキングボールなど切れ味鋭い変化球が増え、スライダー、スイーパー、スラーブなどの回転率は2015年の2106回転/分から今年は2475回転/分に急増、使用率も10・9%から22・5%と2倍以上になっている。

 ドジャースなどの球団はフロントにアナリストを多数雇い、綿密なデータ分析を施して、投手に投げるべきボール、投げるタイミング、投げ方の指示を細かく与える。ブレーブスの左腕マックス・フリードはフォーシーム、シンカー、カッター、スライダー、スイーパー、カーブボール、チェンジアップの7球種を使い分けるが「情報が普及しているため、秘密はない。野球は依然として軌道に変化をつけ、緩急をつけ、いかに打者のバランスを崩せるか。それができれば成功できる」と話している。

 ヤンキースは2020年シーズン前にフロリダ州タンパのマイナーリーグ施設に「ガスステーション」と呼ばれるピッチングラボを建設し、これは今やメジャーで一般的になりつつある。“Pitch shape(形状)”という言葉も一般的になった。「以前はチームが新しい球種を追加しない期間が数か月続くことがあった」とツインズのロコ・バルデリ監督。「それが今ではほとんど毎シリーズで、対戦するチームの誰かが全く違うことをしているのを見る」と話す。データとテクノロジーの力で、投手は短期間で新たな球種をマスターしてしまう。

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