【内田雅也の追球】「1死三塁」をめぐる攻防 俊足生かしたノイジー、フォームに課題残したB・ケラー

[ 2023年3月13日 08:00 ]

オープン戦   阪神5―3巨人 ( 2023年3月12日    甲子園 )

<神・巨>4回、板山の投ゴロの間に生還するノイジー(撮影・大森 寛明)
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 アメリカでは走塁に関して、古くから「回の最初と最後のアウトが三塁上で行われることがあってはいけない」という格言がある。

 無死ならば長打を放った時や走者二塁で投球がワンバンした時などで無理に三塁を狙う必要はない。次打者のバントを含めた打球で1死三塁をつくれる。また2死なら二塁にとどまっていても単打での生還が望める。

 つまり、三塁を狙う激しい走塁が必要なのは1死の時だと言える。1死三塁なら外飛(犠飛)や内野ゴロでの得点を狙える。1死こそ三塁を争う攻防があるわけだ。

 今年初めて行われた阪神―巨人戦(甲子園)で、阪神の先取点(4回裏)、巨人の同点(5回表)は、いずれも1死で走者が三塁にいたことにより、内野ゴロで得点を刻んだものだった。

 阪神は先頭の新外国人シェルドン・ノイジーが二塁打。次打者・佐藤輝明の左中間後方への左飛でタッチアップし三塁を奪った。好走塁である。

 VTRでタイムを計ると二―三塁間3秒89で驚いた。俊足だからこそ、余裕でセーフだった。

 1死三塁としたことで板山祐太郎のボテボテ投ゴロで生還できた。巨人二遊間は2ストライクまで引いて守り「1点やむなし」の陣形だった。

 5回表の失点は新外国人ブライアン・ケラーが連続四球を与え無死一、二塁。打者・中山礼都をフルカウントからランエンドヒットを仕かけられ、空振り三振を奪ったが重盗を決められた。捕手・梅野隆太郎の三塁送球は左にそれたのは焦ったがためだろう。何しろフォームが大きすぎた。

 左足を高く上げ、投球タイムは実に1秒52。この回無死一塁でも1秒24~38。これでは捕手ががんばっても二盗、さらに三盗も許してしまう。

 球威・制球ともに欠くB・ケラーは2軍行きとなるようだが、クイック投法も必要だろう。

 さて、結果は重盗で1死二、三塁となって阪神二遊間は引いて守った。新外国人ルイス・ブリンソンの打球が遊撃前に緩く転がった時点で1点は確定だった(結果は内野安打)。やはり1死での三塁が効いていた。

 岡田彰布が監督復帰し原辰徳とまみえた。マジックナンバーが阪神から消え巨人にともった、あの2008年10月8日の東京ドーム以来、15年ぶりだった。懐かしいが、岡田は「別に、何とも」と笑っていた。=敬称略=(編集委員)

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2023年3月13日のニュース