最速148キロの二刀流遊撃手 東奥義塾の「根尾2世」中田歩夢が決勝打 衝撃守備も連発

[ 2022年7月15日 21:28 ]

第104回全国高校野球選手権青森大会・3回戦   東奥義塾1―0三沢 ( 2022年5月15日    はるか夢球場 )

投げては最速148キロ、打っては高校通算23本塁打の中田(撮影・柳内 遼平)
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 落ちる夕日よりも早くゲームは進んだ。スコアボードにゼロが連なる手に汗握る投手戦。0―0で迎えた6回2死二塁。右打席に立った東奥義塾の中田歩夢(3年)は「自分たちのスローガン“必笑”を貫こう」と三塁側ベンチに笑ってみせた。外のスライダーを流し打ちで右前へ。技ありの決勝打を放った男は「自分の一打で勝利に導けたことは自信になる」とたくましかった。

 プロ注目の二刀流遊撃手。投げては最速148キロ、打っては高校通算23本塁打と投打に才能を発揮。この日は「2番・遊撃」で勝利に貢献した。遠投120メートルの強肩を投手にも生かす。遊撃手から投手に転向した中日・根尾に「自分も2年冬から投手になった。似ている」と姿を重ねる。次戦に向けて「自分の役割はストッパーとして0点に抑えてチームを勝利に導くこと」と救援登板に照準を合わせた。

 「根尾2世」の守備に2球団4人のスカウトの眼光が鋭く光った。5回無死二塁。打者がバントの構えから見逃すと、二塁走者が飛び出した。捕手からの送球を中田が捕球した時には走者は三塁に到達寸前。そこからグラブを突き破る勢いで送球し三塁タッチアウト。次打者は三遊間への打球。今度は水切りのように鋭いワンバウンド送球で刺した。高校生離れした好守連発。日本ハム・白井康勝スカウトは「148キロが出るような肩の強さ。送球が安定している」と評した。

 球場の右翼側には小学5年時に8合目から登頂した標高1625メートルの岩木山がのぞいた。頂上付近にある神社では「プロ(野球)に行かせてくれ」と願ったという。学校創立150周年で、野球部創部100周年の節目。41年ぶりの甲子園出場と、同校初のプロ野球選手へ。名の由来の通り一歩ずつ夢への歩みを進める。(柳内 遼平) 
 
 ◇中田 歩夢(なかた・あゆむ)2004年(平16)6月27日生まれ、青森県弘前市出身の18歳。福村小3年時から福村ガッツで野球を始める。弘前東中では軟式野球部に所属。東奥義塾では1年夏からベンチ入り。趣味はソフトバンク・今宮の守備動画をYouTubeで視聴すること。1メートル72、76キロ。右投げ右打ち。

○…鉄壁の投手リレーで1点差を逃げ切った。エース右腕・角田楓斗(ふうと=3年)は5回を3安打無失点、自己最速まで3キロに迫る140キロを計測した直球で押し込んだ。6回から救援した背番号10の右腕・木村駿介(3年)は4回を3安打無失点。コースを丁寧に突く投球で最後まで投げきった。準々決勝進出を決めた工藤秀樹監督は「捕手を中心としたセンターラインがよく守ってくれた」と守備を称えた。

○…東北で「スカウトマンの大移動」が発生した。プロ注目の盛岡中央の最速150キロ右腕・斎藤響介(3年)が、岩手の「しんきん森山スタジアム」で登板予定だったが、午前9時ごろ、雨天中止が決定。最寄りの北上駅に集結した10人ほどのスカウトは、ドラフト候補を求めて南北に散った。本紙記者と2球団4人のスカウトは青森県弘前市の「はるか夢球場」へ。約3時間、東京―名古屋間に等しい約260キロの大移動だった。

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2022年7月15日のニュース