【スポニチスカウト部(12)】花巻東・田代旭 広角に長打生み出す「ねじれ」

[ 2022年5月10日 06:00 ]

ドラフト候補の捕手の中でトップクラスの打撃力を誇る田代
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第12回はエンゼルス・大谷、ブルージェイズ・菊池の母校・花巻東で、主将を務める田代旭捕手(18)。4番、捕手の重責を担う男が、高校通算47本塁打の強打を武器にプロ入りを狙う。

 ドラフト候補の捕手の中でトップクラスの強打を誇る田代は、守備力も成長している。巧みなミットの動きでストライクに導く「フレーミング技術」を高めるため試合では球審に「キャッチングはどうでしたか」と助言を求める。試合後は「自然にミットが出ているか」と映像を凝視。守備力向上を目指すチームを、主将は背中で引っ張っている。

 「プロで活躍できる選手になりたい。理想像は盗塁阻止ができて本塁打も打てる捕手。誰にも負けない気持ちは強く持っている」

 高校野球史上かつてないペースで本塁打を量産する3番・佐々木麟太郎(2年)は、春季大会の花巻地区予選終了時点で高校通算64本塁打。これまで相手校が「佐々木勝負」を選んできたのは、同47本塁打の田代が4番にいたからこそだ。豪快なスイングで広角に長打を打ち分ける左打者は「長打の確率を追い求めて頼れる4番打者になりたい」と言う。

 入学時は小さな打撃フォームだったが、1年時に佐々木洋監督から「しっかりフルスイングしていくのはどうだ」と助言を受けてフォーム改造に着手。スタンスを広く取り、脇を開けて構える大リーガーのようなフォームが完成。「ねじれ」を意識して下半身から上半身に力を伝え「引っ張りも流しも自信がある」と胸を張る。

 今春のセンバツで自身初の甲子園出場を果たし、初安打を適時打で飾るも、1回戦で市和歌山に4―5で競り負けた。聖地を「楽しくて素晴らしい場所」とイメージしてきたが、現実は「プレッシャーを感じてずっと焦ってしまっていた」と厳しいものに。それでも最後の夏へ向けて「1度甲子園を経験していることは大きいので夏は違うものになる。球児の誰もが憧れる場所で余裕を持ってプレーしたい」。東北勢初の日本一を果たして夢のプロ入りもかなえてみせる。(柳内 遼平)

 ≪打撃の原点は大谷翔平父の指導≫田代は中学時代、現在もチームメートの宮沢圭汰(3年)、熊谷陸(2年)、佐々木とともに金ケ崎リトルシニアに所属。エンゼルス・大谷翔平投手の父で、チームの創立者でもある大谷徹監督(59)から指導を受けた。中学の3年間を田代は「毎日教わるのが楽しみだった。プレーする意味や全力疾走など野球の基礎を教えてもらえて中身の濃い時間でした」と振り返る。打撃の心構えについては大谷監督から「ストレートのタイミングで打ちにいって変化球は止まってミートする」と教えを授かった。どんな球種、コースも対応できる打撃のルーツは中学時代にあった。

 ☆球歴 上郷小2年時に上郷野球スポーツ少年団で野球を始める。遠野東中時代は金ケ崎リトルシニアに所属。花巻東では1年秋からベンチ入り。2年秋から主将を務め、3年春に「4番・捕手」で甲子園初出場。

 ☆心に刻まれた一発 21年秋の東北大会で優勝し、同校は明治神宮大会に初出場。田代は高知との準々決勝で右越えに高校通算40号。だが、一番印象に残っているシーンは広陵との準決勝で当時1年の佐々木が放った右越え3ラン。高めのボール球を放り込んだ高弾道の一撃を「あれで入ってしまうのは衝撃。ほぼ毎日“すげえな”と映像を見返しています」と振り返る。

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