【内田雅也の追球】併殺が取れる二塁手 陰のヒーローはプロ4年目の21歳、小幡竜平である

[ 2022年4月16日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4ー1巨人 ( 2022年4月15日    甲子園 )

<神・巨> 3回1死一塁、若林の二ゴロで併殺を奪う小幡(右)と中野の二遊間コンビ(撮影・大森 寛明)
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 お立ち台に並んだ青柳晃洋、佐藤輝明、メル・ロハスの3人が笑顔でインタビューを受けている時、陰のヒーローはすでにベンチ裏通路に消えていた。プロ4年目の21歳、小幡竜平である。

 3個の4―6―3二ゴロ併殺を決めた。いずれも失点の芽をつむ併殺だった。3回表1死一塁で若林晃弘のバスターに動ぜず難なくさばいた。4回表無死一、二塁では丸佳浩が引っかけたゴロにチャージ、反転して二塁送球した。8回表1死一塁では再び若林の緩い二ゴロを素早い送球で仕留めた。いずれも打者は左の俊足で、コンマ何秒の勝負に勝ったのだ。

 むろん、シンカーやツーシームでゴロを打たせた青柳の投球はさすがである。その青柳がお立ち台で8回1失点と好投しながら「守備に助けられてばっかりでしたけど」と言ったのは謙遜ばかりではないだろう。

 開幕当初は代走・守備要員だった小幡は10試合目の今月5日DeNA戦(甲子園)で初先発し、以来7試合目の先発(すべて二塁手)だった。

 比較したり、批判的に書く気はないが、二塁手として糸原健斗を守備範囲の広さ、送球の速さ強さでしのいでいる。併殺の取れる二塁手である。

 この夜の3併殺で阪神がチームとして奪った併殺は15個。ヤクルトと並びリーグ最多となった。

 小幡はこれまでも走者一塁時の二ゴロで並の二塁手なら安全策で一塁送球してしまいそうな打球を、素早い反転で二塁封殺していた。得点圏に走者が進むピンチを未然に防ぐ、目立たない好守が幾度もあった。

 延岡学園時代から本職は遊撃手。あの名手、吉田義男でさえ、藤田平の台頭で晩年二塁手に転向した際、<苦しい守り>だったと『牛若丸の履歴書』(日経ビジネス人文庫)で述懐している。<同じ内野でも遊撃と二塁は別世界>である。小幡の若さと順応性(つまり成長力)に舌を巻く。

 相手巨人が3失策し、8回裏には失点にも絡んだ。一発長打の少ない甲子園で求められる「守り勝つ」野球ができた。

 開幕から泥沼の阪神だが、ふと見直せば失策はわずか6で、何とリーグ最少である。昨年まで4年連続リーグ最多失策だった守備力の向上に光を見たい。=敬称略=(編集委員)

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2022年4月16日のニュース