【内田雅也の追球】「あと1球」ダイブの無念…気になったのは緊迫場面での近本の守備位置

[ 2022年4月7日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1ー6DeNA ( 2022年4月6日    甲子園 )

<神・D>9回2死二塁、牧の打球に近本がダイビングするも及ばず同点適時二塁打となる(撮影・北條 貴史)
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 延長12回裏、深夜の甲子園球場のスタンドには、あちこちでスマホのライトを点灯させた光が揺れていた。敗戦を前にしたファンの抗議行動だろうか。「蛍の光」のように別れを告げているのか。2死後、球審がウグイス嬢を通じ「試合進行の妨げとなりますので――」と消灯を依頼した。

 12回表の大量失点時、スタンドは静まりかえっていた。投手の制球難に守備の乱れが絡んだ。バント空振りで飛び出した走者を生かし、バントシフトでのバスターに対応できなかった。

 阪神は痛い試合を落とした。残念だったのは伊藤将司が完封まで「あと1球」で舞った右中間飛球である。中堅・近本光司のダイブも及ばず、無情にも白球は芝生の上で弾んだ。1―0の9回表2死二塁。牧秀悟に浴びた同点打である。

 捕ればファインプレーだった。気になったのは近本の守備位置だ。左中間寄りに守っていた。この位置取りを見て記者席で同僚に「逆に右中間寄りに守るべきではないだろうか」と話していた。

 牧は4番を打つ強打者だが、緊迫場面ではよくおっつけ気味でくる。単打狙いの打撃である。

 加えて、この日は伊藤将に前3打席凡退で2本の三ゴロがあった。さらに、2ストライクと追い込んでいた。しかも、投球は外角低めへのチェンジアップだった。

 予想通り、いや悪い予感的中と言うべきか。打球は右中間寄りに飛び、わずかに及ばなかった。

 チームには細かな打球傾向のデータがある。守る野手の勘もある。記者席からでは分からぬ事情があったのだろう。

 同じダイブで11回表先頭、大田泰示の右翼前ライナー性打球に佐藤輝明が飛び込み後逸、三塁打にした。無理せず、単打でとどめておく打球ではなかったか。無死三塁から後続を湯浅京己が断ち無失点で終えたが、判断はどうだったろう。

 状況判断の問題は打撃面でも言える。6、7、10、11回と得点圏に走者を置きながら「あと1本」が出なかった。悪球や難球に手を出し、好球を見逃す場面が相次いだ。

 闘志がたぎるのはわかる。ただ、当欄で幾度も書いてきたが「ウォーム・ハート、バット、クール・ヘッド」だ。心は熱く、一方で頭は冷静でありたい。=敬称略=(編集委員)

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2022年4月7日のニュース