謝罪を行った判断も“好ジャッジ”だった 元NPB審判員の柳内遼平記者が解説

[ 2022年3月21日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第2日第1試合・1回戦   広陵9―0敦賀気比 ( 2022年3月20日    甲子園 )

<広陵・敦賀気比>4回無死一塁、広陵・大山が一塁線にバントした打球の判定の誤りを認め場内に説明する尾碕球審(撮影・大森 寛明)
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 今回の判定は2点、大きな意義がある。ジャッジの変更内容と、謝罪という行為だ。

 最終ジャッジには「公認野球規則8・01(c)」を適用した。11~16年にNPB審判員を務めた私も使ったことがない「切り札」で判定を変えた。簡単に言えば「規則にないことは自分で判断すべき」というもの。230ページにわたる規則書でも「審判員が誤ってファウルのジェスチャーをした場合」の記載はない。

 球審の判定を尊重すれば、最初の判定通り併殺。二塁塁審の判定を尊重すれば、ファウルに判定を変更して無死一塁で継続、となる。だが、審判団は先述の規則を適用して、どちらでもない「1死二塁」を選択した。

 ミスの後、4審判員は即座に協議して「落としどころ」を探した。併殺を取り消して「1死二塁」はベストだったと思う。守備側は一塁へ送球しており、二塁塁審の「ファウル」のコールがなければ1死二塁に至ったと考えるべきだ。

 プロでは考えにくい謝罪を行うという判断も、「好ジャッジ」と言える。誠意を示したことでモヤモヤが残らず、選手や観客に納得してもらって試合を続行できた。試合をマネジメントする大きな権限と責任を持つ審判員にとって、謝罪には大変な勇気がいる。ミスへの適切な対処に送られた拍手に、私自身も胸を打たれた。(アマチュア野球担当・柳内遼平)

 ▽公認野球規則8・01(c) 審判員は、本規則に明確に規定されていない事項に関しては、自己の裁量に基づいて、裁定を下す権能が与えられている。

 ▽審判員に対する一般指示 (中略)正しい判定を下すことが第1の要諦であることを忘れてはならない。疑念のあるときは、ちゅうちょせず同僚と協議しなければならない。審判員が威厳を保つことはもちろん大切であるが、“正確である”ということがより重要なことである。

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2022年3月21日のニュース