一丸姿勢で乗り切れるか 吉田正復帰まで…正念場オリックスの真価試される

[ 2021年9月8日 09:00 ]

オリックス吉田正
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 25年ぶりのリーグ優勝を目指すオリックスが正念場を迎えている。主砲の吉田正尚外野手(28)が左太腿裏の筋損傷で離脱した。故障防止を徹底していただけに、その悔しさを思うと胸が詰まった。

 17年10月からオリックス担当記者として、背番号34を追いかけてきた。19年の国際大会「プレミア12」では宮崎・沖縄合宿から本戦の台湾・東京へ付いて回り、今夏の東京五輪でも仙台合宿から同行取材。よく「ケガだけはしないようにしないと」と口にしていた。

 「どれだけ気を付けていても、何が起こるか分からない。死球を受けて指や腕を骨折するかもしれない。走塁や守備で、足を痛めるかもしれない。でも、どのプレーも全力でやる。チームの勝利につながるように。いいパフォーマンスを出すためには、全力で取り組むしかないですから」

 患部を負傷したシーンが、この言葉を証明している。9月3日のソフトバンク戦。1―1の9回に遊撃へのゴロで一塁へ全力疾走し内野安打。その後のジョーンズの決勝打につなげた。チームに貢献したい思いからだ。

 1、2年目に腰痛に悩まされた過去から、「そもそも試合に出られなければチームの力になれない」。ストレッチなど入念な準備を欠かさない。腰痛再発防止へ「エアウィーヴ」のクッションを持ち歩き、今春キャンプからは、コロナ禍で外出自粛が続く宿舎に電気治療器具「ハイチャージ」も導入。「トレーナーさんにケアをお願いしますが、コロナで長時間は頼めない。できるだけ自分でやらないと」と東京五輪中の宿舎にも持ち込んだ。

 重要視していた連続試合出場は「512」で途切れてしまったが、大事な時期にチームに貢献できない悔しさが勝る、吉田正は、そういう男だと思う。

 打率・338、20本塁打、69打点を残す主砲の不在はチームにとって痛手だ。中嶋監督は「正尚の代わりは誰もいない。野手だけではなく、相手より1点でも少なく抑えるとか、投手陣にも頑張ってもらわないと」と話していた。長く過酷なシーズンで必ず故障者は出る。どの球団にも当てはまること。その穴を埋める存在やチームの総合力といった地力の差が明暗を分ける。

 9月7日のロッテとの首位攻防3連戦第1R。試合前に、ジョーンズがコロナのワクチン接種による副反応で「感染拡大防止特例2021」の対象選手として出場選手登録を外れた。負の連鎖?…という状況で、その代替指名選手として登録された大下が大仕事。1―3の8回に1号ソロ、9回にサヨナラ打を放ち、首位に返り咲いた。投手陣も粘った。先発・宮城は安打を許しながらも最少失点で耐え、吉田凌、海田、ヒギンス、平野佳と救援陣も無失点だった。

 2年連続最下位からの急激な上昇曲線は勢いか、実力か。吉田正の復帰まで、一丸姿勢で乗り切れるか。中嶋オリックスの真価が試される。(記者コラム・湯澤 涼)

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2021年9月8日のニュース