野球人・稲葉篤紀の原点はイチローも通ったバッティングセンター

東京五輪第16日　野球決勝   日本2―0米国 （ 2021年8月7日    横浜 ）

稲葉監督とイチロー氏がよく使用した8番レーンには両者の写真が掛けられている　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
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　侍ジャパンは東京五輪決勝で米国を2―0で下し、公開競技だった84年ロサンゼルス以来37年ぶり、正式競技では初めて金メダルを獲得した。1次リーグから5戦全勝で頂点に立った稲葉篤紀監督（49）はメダルを逃した08年北京での屈辱を指揮官として晴らした。同監督が小中高と通ったバッティングセンター経営者が“原点”を語った。

　「地元の誰からも愛されて、本当に人柄と努力の方だと思う」。そう切り出し、はるか昔を懐かしんだのは愛知県豊山町の「空港バッティング」の経営者、前田岩夫さん（81）。稲葉監督が小中高と通い続けたバッティングセンターは、1学年下のイチローも中学まで毎日通っていたことで知られる。

　2人がよく使用した、左打席を備える最も速い120キロの「8番レーン」には両者のパネルが掛けられている。「当時は同じような年代の子がたくさん来て。稲葉監督は目立つような感じではなかった」。後に通算2000安打し、金メダル監督となる姿は想像していなかったという。

　日本ハム時代の晩年、稲葉監督は原点であるこの打席での「初打ち」を1月2日に行っていた。「周りにいた子供たちにも熱心に指導をしてくれた。本当に丁寧に」。口コミで噂が広がり、3年目の1月2日には朝から駐車場に車の列が並ぶ騒ぎとなった。「結局、その年は所用で来られなくて。いい思い出ですね」と懐かしむ。北海道から一人で足を運んで打っていく女性ファンもいたという。

　「毎年キャンプから12球団全てに足を運ばれて。これだけ長く熱心に打ち込んだ日本代表監督は今まで見たことない」と前田さん。金メダル獲得を喜び、波及効果にも期待する。「これで地元の野球界も盛り上がってほしい。また地元で指導してくれないかな。やっぱり北海道で活躍されるのかな」と地元ファンの思いを代弁した。