ロッテ・石川歩の魔球シンカーみたいな性格が面白すぎる

[ 2020年11月17日 14:00 ]

ロッテの石川歩投手
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 【君島圭介のスポーツと人間】石川歩を応援してきたロッテファンなら「らしいね」と頬が緩んだはずだ。球団のメジャー挑戦容認から、まさかの本人の断り。昨オフの契約更改でポスティング・システムを利用して米球界移籍を希望。球団は真っ直ぐに受け止めようとしたが、寸前で宝刀シンカーのように軌道がずれていった。

 12球団の投手で誰の球が本当に凄いか。オリックス・山本、ソフトバンク・千賀、巨人・菅野の名前はすぐに浮かぶが、個人的には石川を挙げたい。「石川さんの投げる球なら捕手は誰でも勝てる」という意見を聞いた女房役の田村は「あのシンカーが捕れるならな」と呟いた。まさに魔球。石川にその握り方を聞くと、簡単に教えてくる。門外不出のはずだが、頼めば「いいですよ」と写真も撮らせてくれる。もちろん、真似しようにも一朝一夕には身につかない。

 「肌が弱くてカミソリ負けするから」と伸ばしている髭の量が増えた以外にも近年の石川には変化が現れている。最優秀防御率を達成した16年シーズンは、直球の割合が全体の54・1%。今季は30・5%まで落ちた。昨季くらいから積極的に使い始めたツーシームの割合が16・9%に増えた影響もある。投手として今、過渡期なのだ。そんな大事な時期は環境を変えない方がいい。日本残留はキャリアとしても正しい選択だと思う。

 前回CSに進出した16年のオフ、ZOZOマリンの室内練習場で話していると石川が突然に「僕、優勝したいんです」と言い出した。その年、シーズン3位で終えたロッテはCSファーストステージでソフトバンクの前に敗れた。今回、2位で進出したCSで、石川は左ふくらはぎ痛のために登板できなかった。どれほど悔しい思いを抱えているか想像に難くない。

 勝利投手になっても「今日の投球は全然よくなかった」と答え、こちらの構えたところをひょうひょうと外してくる。だが、「優勝したい」という純粋な思いは150キロを超える直球のようにズバッと突き刺さる。好きな言葉を聞かれ「千葉ロッテマリーンズ」と答える男が、今オフのメジャー挑戦を断念した理由は「いい仲間のいるこのチームで優勝したい」。それしかないと思っている。(専門委員)

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2020年11月17日のニュース