期待したい大谷の「1番・投手」出場 16年の“漫画のようなシーン”再現を

[ 2020年7月31日 09:00 ]

俊足ぶりもクローズアップされているエンゼルスの大谷
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 今年は期待し過ぎてはいけない、とも思う。それでも、期待せずにいられない。それだけの魅力とポテンシャルを備えているのが、エンゼルスの大谷だ。

 693日ぶりの公式戦登板となった26日のアスレチックス戦では、1死も取れずに降板し5失点。一方で、バットでは早くも本領を発揮した。29日のマリナーズ戦、類いまれなバットさばきとパワーで地面スレスレのカーブを右中間に1号ソロ。今季は開幕3番を務め、左脇腹痛を訴えていたレンドンの復帰と同時に4番に座っている。そんな大谷にあえて期待したいのが、「1番・投手」としての出場である。

 「日本のベーブ・ルース」こと大谷が、本家のルースを最も上回っている能力は何か。私は走力だと思っている。本塁から一塁までのスピードは常時、時速31~32キロ台をマークし、メジャー平均の時速約29・6キロを大きく上回る。18年は10盗塁、19年は12盗塁を記録し、次の塁を積極的に狙う意識も高い。

 日本のファンの脳裏にも焼き付いているだろう。16年7月3日のソフトバンク戦で「1番・投手」として初回、初球を叩いて先頭打者本塁打を放ち、投げては8回無失点で勝利投手。逆転優勝へとチームを勢いづけた。この時は一振りで大きく貢献したが、渡米後は俊足ぶりもクローズアップされている。

 ルースは二刀流として13勝&11本塁打をマークした1918年、投手として出場した試合は4番か9番が中心で、7番が一度(当時はDH制なし)。1番での出場は、キャリアを通じてゼロだ。ちなみに通算で123盗塁しているが、記録に残っているだけでも117の失敗がある。

 冒頭に記した通り、右肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)からの復帰1年目だけに、大谷に投手としてのパフォーマンスに関して即、完全復活を求めるのは酷だろう。他の部位から移植した腱が腕になじむまでには相応の時間を要し、誰もが思うような投球を取り戻せずに苦しむからだ。しかし、60試合に短縮されたシーズンだからこそ、二刀流でフル回転できるチャンスがある、ともいえる。

 球団は今季、投打で同時出場する「リアル二刀流」には慎重な姿勢を崩さないものの、知将として名高いジョー・マドン監督は、開幕直前にこう言った。「この職を得た瞬間から、大谷が投げた日に打つところをいつか見たいと思っていた。現時点のプランにはないが、アジャスト(修正)はあるかもしれない」。修正プランの延長戦上に、16年に見た漫画のようなシーンが再現されることを、ひそかに熱望している。(記者コラム・大林 幹雄)

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2020年7月31日のニュース