「特例」検討は野球界全体の問題になってくる

[ 2020年4月14日 11:30 ]

本来ならプロ野球開幕の3月20日、閑散とする東京ドーム
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 休業要請は補償とセットであるべきだ。そういった声が全国で議論されている。その補償。どこまで個々の事情まで踏み込んで行き届かせることができるのか。「財源」という点で各自治体で異なるし、そこに「平等」「一律」というフィルターを入れると、さらに線引きは困難になる。

 新型コロナウイルスの感染拡大影響で「現在」すら予測できない。それが「未来」のことであれば、なおさらだ。同じことは開幕目標すらも設定できないプロ野球界にも言える。あるベテラン選手は「実績のある選手は現状を受け止めるだけの財力や一定の地位がある。だが、若手選手は、本当に年俸が払われるのか、今のまま野球を続けていいのか、不安な気持ちが日を追うごとに増えている」と明かしている。

 プロ野球が今議論すべきは、シーズン開幕への準備。選手も限られた練習環境下で努力を重ねている。だが一方で、終息が見えない状況が続けば「未来」のことも同時並行で議論すべきことになる。4月3日の12球団実行委員会では「新型コロナウイルス特例」として、選手のFA補償、万が一シーズン中の感染者が出た場合の出場選手登録などの議論が行われたという。それはあくまで「開幕をしてシーズンをこなす」という前提に立ったもの。5月以降の感染状況の変化を願いつつも、変化が生まれない場合は「未来」への議論も必要になる。

 まず、選手の年俸補償について。大リーグでは機構と選手会が労使協定に基づき、今季開幕後の年俸は試合数に比例することで合意したが、日本の統一契約書では試合数に言及せず、野球協約に定められた参稼報酬期間は2月1日から11月30日までの10カ月間となっている。仮に削減となっても、高年俸の選手は対応できるだろうが、低年俸の選手は苦しい。

 さらに戦力外をどう判断するのか。イースタン・リーグ、ウエスタン・リーグの試合数も減れば、それだけアピール機会はなくなる。戦力外に対する一定の判断基準も必要だろう。それはドラフト会議の戦力補強ともリンクしてくる。

 アマチュア界も高校、大学、社会人ともに大会が中止に追い込まれている。本当のトッププロスペクト(有望選手)の評価は不変だろうが、12球団が育成選手含めて10人程度指名するだけの全国規模の調査は進められるのか。特に成長著しい高校生の力量を見定めることが難しくなる。

 戦力外選手やドラフト指名選手の人数を限定すれば、今度は指名漏れ選手への「補償」もセットで考える必要もある。そこに「平等」という観点をどこまで入れられるのか、プロアマ全体の問題となる。

 プロ野球側の視点だけでも問題は山積しているが、「新型コロナウイルス特例」は12球団だけのことではない。全員が満足するルール作りは難しいが、野球界全体で議論を進める時が来ている。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2020年4月14日のニュース