トヨタ自動車・佐竹功年 社会人野球14年目で新時代令和へ 「まだ道半ば」

[ 2019年5月13日 12:19 ]

トヨタ自動車の佐竹年功
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 平成の時代が終わりを告げた。アマチュア球界において前半の「ミスターアマ野球」が杉浦正則氏(50=日本生命)なら、後半はトヨタ自動車・佐竹功年投手(35)だろう。輝きに満ちたキャリアは、今季で14年目。令和の新時代を迎え、その現在地を追った。

 
 絶え間ない雨にたたられたマウンドを丁寧にならす。いつ何時も変わらないルーティンがそこにはある。平成31年4月29日に行われた社会人野球・JABA京都大会のパナソニック戦。2―6の6回無死一、二塁という場面で、佐竹は今大会の初登板を果たした。

 「味方が追い上げてくれていたので何とかゼロで抑えたかったですが全然ダメでした。こんな状態では予選に臨めないので、しっかり状態を上げていきたい」

 登板直後に連打を浴び2者の生還を許した。その後は尻上がりの内容となり、3回を投げ4安打無失点。ストレートは140キロ台後半をマークしたが、来たるべき都市対抗予選を見据える佐竹の自己評価は厳しい。常に危機感を抱きながら過ごす日常を、垣間見た気がした。

 「年を取れば取った分だけ、捨てていかないといけないものもある。準備の時間も長くなりますし、変えていくべきことが増えてきています。社会人の場合は社業がある中で練習時間は決まっていて、早く来て準備するということはできません。だから、その中での見極めが大事になってきます」

 身長1メートル69。体格には恵まれなくとも、創意工夫で150キロの速球を手に入れた。香川・土庄中時代から続く肩甲骨の可動域を広げるトレーニングが日課。肩のインナーと体幹の強化は毎日欠かすことができない。ここ数年は自重を用いてのトレーニングにも精を出すようになった。週2、3回のペースでメニューは14種類。元来、ウエートトレーニングは行わなかったが、ダンベルを使用することは一切やめた。

 昨年のジャカルタ・アジア大会で侍ジャパン社会人代表に選出されるなど国際大会の経験も豊富だ。だが、そんな過去の実績にとらわれることなく、未来に目を向け、常に高みを目指している。飽くなき向上心は、一体どこから来るのだろうか。

 「もう、自分のことには興味がありません。チームが勝つこと。トヨタが強くなること。それしかない。相手チームに“トヨタは嫌だな、やりたくないな”と思わせられるように。あるいは多くの学生の人たちが“トヨタで野球をやりたい”と思ってもらえるような名門チームにしたい。都市対抗、選手権と優勝させていただきましたが、まだ道半ばなんです」

 土庄高、早大を経て06年に同社に入社した。2年目の07年に日本選手権で初優勝。08、10、14、17年と計5度の優勝を成し遂げた。16年には都市対抗野球でも悲願の初優勝。その多くに、佐竹は不動のエースとして貢献した。

 それでもなお、歩みを止めないのは「まだ“強い”で終わっている。一過性というか、良い選手がいたから、強かった、ではダメ。JX―ENEOSや東芝のように、長きにわたって強豪、名門と呼ばれるようになりたい」という思いがあるからだ。チームが勝つために何が必要で、自らに課された役割は何かを徹底的に考える。そこから、1球にかける並々ならぬ思いが生まれ、エースとしての哲学を築き上げた。

 「ここ、というところで抑える。チームの勝ちに貢献する。結果と姿でチームを引っ張る。練習も試合も背中で見せる。ユニホームを着ている間はチームにとって必要と思われないといけない。結果以外の部分も含めて。僕がいるから若手が育たない部分もあるかも知れない。そんな中でも、僕を残してくださったスタッフの思いには応えないといけない。応援してくださる人たちに対してもそう。社会人野球は応援してくれている人たちとの距離が近く、職場の方々が応援に来て下さいます。全ての人に信頼されるのがエース。負けても“こいつなら仕方ない”と思われる存在こそが、エースではないでしょうか」

 転機は入社1年目にあった。不振にあえいだ前年までの大黒柱が、20代半ばで戦力外を通達された。その時、残された時間が決して多くはないことを、痛感させられた。「1日1日を懸命に取り組んだ」と振り返るが、それでもその後の数年はチーム内でも3、4番手の位置づけだった。誰もが認めるエースとなったのは、6~7年目。その立場になってようやく、かつて、早大の3年先輩にあたる和田(ソフトバンク)からもらったアドバイスを、理解できるようになったという。

 「まだエースではなかったころです。“その時、マウンドに立ったやつがエースだと思って投げろ”とお言葉をいただいたのですが、自分がその立場にない以上、そう考えることって実は難しいことなんです。でも、あとあと時間が経って、僕の受け止め方も変わってきて、その言葉の裏には“マウンドに立つまでに、それだけの準備をして臨めば、そう思える”という意味があったことに気づけたんです」

 最善の準備を尽くすのは、そのためだ。令和の新時代を迎え、佐竹の野球人生で残された日々は、名門・トヨタ自動車を常勝軍団へと変貌させるために捧げる日々でもある。その言動に私心はない。

 若さと老獪さを持ち合わせた投球術。スピンの効いたストレートで三振を奪ったかと思えば、キレ味鋭い変化球で凡打の山を築く。第90回を迎える今夏の都市対抗野球大会。今月21日には東海地区予選の初戦・東海理化戦が予定される。チームのために全身全霊をかける戦いが、まもなく始まる。

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