健大高崎「弱い世代」が春に魅せた圧倒的強打 青柳博文監督「監督人生の全てを懸ける」夏の日本一への覚悟
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アマチュア野球の指導者らに采配やチーム運営などについて、インタビューするスポニチアネックス連載「指導者の思考法」。第17回は24年選抜で健大高崎(群馬)を甲子園初優勝に導いた青柳博文監督(53)。24年春から4季連続で甲子園出場を果たしていたが、昨秋は群馬県大会準々決勝で敗れ、連続出場がストップ。同校初の夏の甲子園優勝を目指すため新たなスタイルの構築を進めている。(取材=アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
――昨秋の県大会では準々決勝敗退で選抜出場を逃しましたが、今春の県大会は決勝の前橋商戦で22安打17得点の打線爆発で優勝。圧倒的な打撃力でした。
「秋は正直、誰をどう使えばいいか、見極めができていませんでした。加えてケガ人も多く、戦力的に厳しい状況で負けてしまった。この代は珍しく1年生大会でも地区予選で敗退していて“力のない代だ”と周囲から見られていたのは事実です。昨秋の敗戦が彼らにとっての本当のスタート地点になったと思います。どん底からはい上がり、冬場の厳しい練習を耐え抜き、春にようやく一つの結果を残すことができました」
――「どん底」からチームを立て直すために、どのようなアプローチをされたのでしょうか。
「まず、選手たちに“自分たちは弱い”という事実を徹底的に自覚させることから始めました。これまでは“力がない”と言われながらも先輩たちの代が勝てていたため、どこか他人事だった。しかし、秋の敗戦でそれが現実のものとなりました。チームを立て直すために部員が多いというウチの強みを生かし、全員横一線での競争を促しました。この代は完全に白紙の状態から、はい上がってきた選手を起用する方針に変えました。それがチーム全体の危機感と活気を生んだのだと思います」
――選手たちの意識が変わったと感じていますか。
「厳しいことを言い合えるようになったのが一番の変化です。以前はどこか馴れ合いの雰囲気でしたが、今は本気で勝つために、仲間に対して厳しい要求をするようになりました。その中心にいるのがキャッチャーの大岩です。彼の成長が非常に大きい。秋の時点では、正直レギュラーの当落線上の選手でした。しかし、今では彼なくしてチームは成り立たない絶対的な存在です。プレーだけでなく精神的にもチームの柱に成長してくれました。打撃でもチームの主軸を担い、守備でも投手陣を引っ張る。世代を代表するキャッチャーになれるだけのポテンシャルを秘めていると感じています。彼の成長が、チームの変貌を象徴していますね」
――現在の打撃力は、近年でも突出している印象です。
「選手たち自身が、石垣元気(ロッテ)ら偉大な先輩たちがいた頃に比べて、自分たちの投手力が見劣りすることを痛感している。だからこそ“打撃でカバーするしかない”という強い意志が練習に表れています。ウチは“ホワイト部活”と言われるように午後7時頃の練習終了後は自由な時間としていますが、彼らはその時間をバッティング練習に費やしている。夜の点呼(午後10時)ギリギリまで室内練習場でバットを振り込み、朝も早くからグラウンドに出ている。その姿を見ていると、春季大会決勝の22安打も決して驚きではありませんでした」
――近年のトレーニングでは、多様な打撃ドリルがありますが、監督は特に「素振り」の重要性を説いているそうですね。
「ただ数をこなすマシン打撃では、どうしても受け身になりがちで、タイミングの取り方といった実戦的な感覚が養われにくい。私が大事にしているのは一本一本の素振りの中で、いかに自分と向き合うかです。ピッチャーのタイプや投球のコースを頭の中に描き、あらゆる状況を想定しながらバットを振る。その濃密な時間が選手の思考力を高め、技術を本物にするんです。王貞治さんのような伝説的な選手たちが地道な素振りを繰り返してきたように、やはりそこが打撃の原点なんです。私も高校時代、火をつけた線香が燃え尽きるまでひたすらバットを振った記憶があります。その積み重ねが、春の打撃力開花につながったと確信しています」
――成長を続ける上級生の一方で、今年加わった1年生は「史上最高クラス」と呼ぶ声もあります。
「特にピッチャーの層の厚さでいえば、間違いなく今までで一番です。これがどう伸びていくかはこれからの育成次第ですが、非常に楽しみな逸材がそろっています。投手では140キロ近いボールを投げる投手が既に5人ほどいます。石垣元気や佐藤龍月(オリックス)の活躍を見て“健大で野球をやりたい”と門を叩いてくれる選手が増えた印象です。先輩たちの活躍が次の世代を呼び込む、良い循環が生まれています。この1年生たちは石垣の代のような、あるいはそれ以上の強力な投手王国を築き上げるポテンシャルを持っています」
――逸材中学生が健大高崎を選ぶ理由は何だと思いますか。
「一番はやはり、国内でもトップクラスと自負している練習施設でしょう。そして、ウチは“大学のような雰囲気”と言われることが多いのですが、自主性を重んじる環境も魅力の1つです。厳しく締め付けるのではなく、ある程度は選手自身に考えさせ、任せる。自分でやればやるだけ成長できるという環境が、向上心の高い選手たちにとって魅力的に映っているのかもしれませんね」
――最後に夏に向けての意気込みをお願いします。
「これまで健大は“春に強く、夏に弱い”と言われ続けてきました。私はそのイメージを払拭したい。夏にこそピークを迎え、最高のパフォーマンスを発揮する“夏モデル”のチームにしたいのです。私の残された監督人生の全てを、夏の甲子園で優勝旗を掴むことにかけています。今年のチームは、その“夏モデル”をつくり上げるための最初の、そして非常に重要な世代です。彼らと共に歴史を変え、深紅の大優勝旗を群馬に持ち帰りたい。その夢を実現するために、これからも選手たちと共に、ひたむきに努力を続けていきます」
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