奈良学園大・新井 右肘故障乗り越え4季ぶり登板 「楽しんで」9回締めて勝利貢献

[ 2019年5月2日 15:18 ]

近畿学生野球リーグ 第5節2回戦   奈良学園大7―4阪南大 ( 2019年5月2日    南港 )

4季ぶり登板を果たし、力投する奈良学園大・新井
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 万感の思いを胸に、奈良学園大の新井顕貴投手(4年=履正社)は懐かしいマウンドで腕を振った。

 「1人目を打ち取ったら、後は楽しもうと思いました。ボールカウントが先行するのも、いつも通り。走者を出すのもいつも通りでしたね」

 7―4の9回から2年春以来、4季ぶりに登板。2死から四球、左前打で一、二塁のピンチを招いたが、最後は相手を右飛に仕留めて無失点で終えた。勝てば今季最終戦となる一戦。最終回のマウンドを託された右腕は登板を、そして野球を思い切り楽しんだ。

 1年春からリーグ戦に登板。秋は3試合で2勝1敗、防御率1・84を記録するなど、将来の先発の軸として期待された。だが故障によって野球人生は一変する。17年8月に右ヒジ疲労骨折が判明し、10月に5カ所を手術。ようやく練習試合での復帰を果たしたのは翌18年の秋だった。

 長く苦しいリハビリ生活を送った。それでも野球に対する情熱、チームに対する愛情は変わらなかった。復帰してからは率先して打撃投手を務め、今季からは投手キャプテンにも就任。「下(の学年)からもいろんな意見を言いやすいような、雰囲気づくりだけは整えたいと思っていました。だいぶ近付いてきたとは思います」。投球以外でもチームに貢献する方法を模索し続けた。

 真摯(しんし)な姿勢は酒井真二監督の心も打った。指揮官は今季最終戦には新井を起用すると決めていた。

 「チームのみんなが彼の頑張りを分かっていますから」

 9回2死、四球を与えるとマウンドへと向かい「アカンかったらオレが代えてやる。だから何も考えず、思い切り腕を振ってこい」と語りかけた。「新井らしい投球だったと思います」と感無量の表情で勝利の瞬間を見届けた。

 同級生の胸にも込み上げてくるものがあった。今秋ドラフト指名候補の菅田大介投手(4年=京都共栄学園)は「簡単に2死を取ったところで、少しウルッと来ました。走者を出してからは、それどころではなくなりましたけど」と笑った。苦しいリハビリに耐える姿、復帰に向けてひた向きに取り組む姿、裏方として雑用をこなす姿…。いろんな姿を間近で見てきた。だから試合後のミーティングでナインに問いかけた言葉にも力が入った。

 「9回、新井が登板したときのベンチやスタンドの雰囲気はすごかった。一体感というか。やはり僕たちは人から応援されるような選手にならないとダメなんだ。新井を手本というか、そういう選手になろう」

 尊敬の念を込めて右翼から勇姿を見守った。9回2死一、二塁。最後の飛球は菅田のもとへと飛んだ。

 新井の心残りは投手キャプテンとしてチームを2季ぶりの優勝に導けなかったこと。優勝の可能性が消滅した前節・大工大戦後、集まってきた下級生に「すいません…」と謝られ、涙腺は決壊した。「負けて…というのも良くないですけど、その時は本当に投手キャプテンをやってきて良かったと思いました」と言う。秋のリーグ戦で選手を続けるかは未定。この日が大学生活最後の登板となる可能性もある。山も谷もあった大学野球生活。「楽しんで投げることができました」と最高の笑顔で振り返った。

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