「だから、楽しめ」帝京大39季ぶりV 唐沢監督が試合前に選手に贈った言葉

[ 2017年5月22日 10:45 ]

 帝京大といえば大学選手権8連覇中のラグビー部を思い浮かべる方が多いかもしれない。首都大学野球で帝京大が1997年秋以来39季ぶり4度目のリーグ戦優勝を決めた。同大OBの唐沢良一監督は11年から就任7年目での悲願達成。「苦しかった。数々の先輩に励ましていただいたおかげ」と素直な気持ちを吐露した。

 昨春は11季ぶりの最下位に低迷。2部の武蔵大との入れ替え戦には2勝1敗で勝って残留を決めたが、2部落ちの危機も味わった。その経験があるからこそ、社会人野球の東芝で日本選手権優勝を経験するなど活躍した指揮官は、勝てば優勝が決まる20日の明星大戦前のミーティングで選手たちにこう語りかけたという。「きょうの試合のような緊張感でやれるチームは少ないぞ。だから、楽しめ」。試合は3回に木下、増田の3、4番コンビの適時打で2点を先制。小倉―菊地のリレーで相手の反撃を1失点に抑え、1点差で逃げ切る勝利に「4年生中心に選手がまとまってよくやってくれた。1年前の入れ替え戦を経験しているのも大きい。入れ替え戦の緊張感とは全然違うので、今回の方が重圧は少なかった」と優勝をつかみ取った選手を称えた。

 唐沢監督は環境面の充実を勝因に挙げた。監督就任翌年の12年12月に室内練習場やウエートルームを併設した寮が完成。広々とした食堂では栄養士の管理の下、「しっかりした食事を摂らないと体は作れない」と朝食からバイキング形式で体づくりに必要な栄養を補給できる。同大OBの阪神・青柳も体が一回り大きくなったことがプロ入りに結びついたという。そして寮に併設された練習場で満足のいくまで練習。「スポーツに力を入れていただいて、ここまで整った施設は他の大学でもなかなかない。環境を整えていただいたのが一番」と感謝した。

 指揮官は「全員がプロ野球選手になれるわけではない」と選手の就職活動でも自ら各企業に精力的に足を運び、選手の将来にも気を配る。選手を入社させるだけでなく、採用後にも採用担当者の元へとあいさつ回りで足を運ぶほどきめの細やかさが光る。卒業した教え子から結婚式の招待状が毎年多数届き「祝儀が大変」と苦笑いするが、卒業後もずっと慕われるのは指揮官の人柄だろう。

 次の戦いは46年ぶり2度目の出場となる全日本大学選手権(6月5日開幕、神宮など)。帝京大は初戦で桐蔭横浜大(神奈川大学野球)と対戦する。「今度はリーグ戦ではなくトーナメントなので目の前の相手だけを見て戦う」。初出場した71年は2回戦で同志社大に1―8で敗れた。今度はこの勢いを保って上位進出を狙う。(記者コラム・東尾洋樹)

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2017年5月22日のニュース