菅野 WBC球で激変ワンシーム 女房役・小林絶叫「エグいわ!」

[ 2017年1月29日 05:34 ]

ブルペンで捕手の小林にワンシームの握りを示す菅野
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 「菅野×WBC球=世界1シーム」――。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、侍ジャパンのエース格として期待される巨人・菅野智之投手(27)が28日、宮崎市内での1軍合同自主トレ初日にブルペン入り。シュート気味に沈むワンシームを5球投じたが、想像を超える変化に本人も驚きの声を上げた。滑りやすいとされるWBC公式球が「化学反応」を起こし、魔球に。右打者の膝元を鋭くえぐる武器をひっさげ、世界の強打者に立ち向かう。

 宮崎での合同自主トレ初日。サブグラウンドでキャッチボールを終えた菅野はブルペンに向かうと、WBC仕様に硬く整備された一番端のマウンドに立った。侍ジャパンでもバッテリーを組む可能性がある小林を立たせた状態で24球目を投げ終えると、静かに次の球種を伝えた。

 「ワンシームで」

 勢いよくリリースされた球は、ホームベースのやや手前で右打者の膝元方向に大きく曲がった。「エグい!これ、エグいわ!」。慌ててミットを伸ばした小林が思わず声を上げると、菅野も「エグいね。でも、何にも細工はしてないよ。普通に投げただけ」と不敵な笑みを浮かべた。真後ろで投球を見つめていた先輩の内海も「今の何?ワンシーム?ヤバいよ!」と驚くほどだった。

 NPB公式球よりも滑りやすいとされるWBC球では、スライダーやフォークは抜けてしまうリスクがある。そのため、菅野は新球チェンジアップの習得を目指している。そんな中での発見。もともと変化の予測が難しいワンシームは、WBC球の特徴が相まって、「沈む球」からシュートのような軌道で右打者の懐を「えぐる球」に変化。「思ったよりも変化が凄い。WBC球だからというのはあると思う。(右打者の)内角を狙うと当たってしまうので、真ん中に構えてもらった」。多くの投手が苦労しているWBC球が、期せずして侍ジャパンのエースに魔球を授けることになるかもしれない。

 小林も太鼓判を押す。「WBC球でワンシームを受けたのは初めて。だいぶえぐってくるので、右打者には有効だと思います」。WBCで対戦する各国の打者は、球種が豊富な菅野を徹底的に分析してくるはず。しかし、宮崎の地で突如として誕生した「WBCワンシーム」はデータにはない未知の変化球。自由に操れるようになれば、ここぞの場面での勝負球になる可能性を秘めている。

 菅野が2月1日からスタートする春季キャンプ(宮崎、沖縄)のテーマに掲げたのは「日本一、世界一」。日本ハムの大谷とともに侍ジャパン投手陣の鍵を握る男は、世界のNo・1を目指し、エグいワンシームで強打者の内角をえぐっていく。 (重光 晋太郎)

 ▽ワンシーム 人さし指、中指をボールの縫い目(シーム)と平行にして、その指で縫い目を挟むように握って投げるムービングファストボール(動く直球)の一種。ボールの進行方向の面に対し、直球(フォーシーム)は1回転の間に縫い目が4度、ツーシームは2度通過する。ワンシームは縫い目が1本線のように見える。縫い目の角度によって変化が複雑になるため、制球が難しく、高度な技術を要する。

 ≪マー君も米国のファン驚かせた≫WBC球と同じMLB公式球は、時として想定を超えた変化を生み出す。昨年7月17日のレッドソックス戦で、ヤンキースの田中が投じた一球は米国の野球ファンを驚かせた。2回2死一、二塁で左打者ホルトに投げた初球のツーシームは、体に当たりそうな内角から大きくシュートして外角のストライクゾーンへ。大リーグ公式サイトは「異次元の変化。アインシュタインでも解明できない」と紹介した。ワンシームとツーシームはフォーシームよりも空気抵抗が小さいため、縫い目の角度、力の入れ具合で大きく変化しやすい。

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