古田敦也氏 現場離れ10年も変わらぬ勝負師ぶり「オレなら敬遠なんだよ」

[ 2017年1月4日 09:30 ]

古田敦也氏
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 エレベーターのドアが開くと偶然、元ヤクルト監督の古田敦也氏が乗り込んできた。「お疲れさまです」と声を掛けると、10年前にヤクルト担当だった記者に気づいて「おう、元気か!」と答えてくれた。

 ちょっと時間は戻るが、昨年10月25日のことだった。札幌ドームで行われた日本ハムと広島の日本シリーズ第3戦が終わった直後で、延長10回に「3番・DH」の大谷が右前へサヨナラ打を放った余韻が、まだ残っていた。

 最上階から関係者入り口がある地下へ、降りるためのエレベータの中で、「あそこで直球を投げるんですね?」と何気なく聞いた。古田氏は「そうだな…。直球だったな」と、なにか違うことを考えているようだった。

 サヨナラのシーンは、2死一塁からの3球目に、一塁走者の西川が二盗を成功させた。これにより、一塁は空いたが、1ボール2ストライクとなって打席の大谷は追い込まれていた。

 バッテリー有利のカウントで、広島は大谷との勝負を選んだ。油断することなく、ストライクゾーンで勝負せず、ボール球を振らせようとした。ところが、大谷はボール気味の内角低め直球を右前にはじき返した。

 マウンドの大瀬良、リードした捕手・石原にとって失投ではない。狙い通りで、同じ球をもう一度投げても、大谷が安打にできる可能性は低いだろう。日本ハム・栗山監督は、どうすれば大谷を敬遠されずに走者を得点圏に進めることができるかを考えていた。両軍にはそんな思惑があった。

 しかし、球場の放送席でその瞬間を見届けた古田氏は独自の野球観を明かした。「オレだったら敬遠なんだよな。大谷を歩かせても、4番の中田に打たれるかもしれない。でも、(広島は)大谷だけには打たせたらいけない。これで日本ハムが日本一になる可能性が出てきたよ」。

 広島は本拠地で2連勝し、札幌ドームに乗り込んできた3戦目だった。この試合を落としても、まだ1勝2敗と余裕があるように見えたが、短期決戦でキーマンを抑えることは鉄則。終わってみれば、ここから日本ハムは4連勝。古田氏の言葉が、そのまま現実のものとなった。

 07年からユニホームを脱いでいるが、あらためて古田氏の野球観は凄いと思った。現場から離れてもう10年が経過した。その勝負師ぶりをあらためて再確認し、「もったいないな」と勝手に思っていた。 (記者コラム・横市 勇)

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2017年1月4日のニュース