沙羅50勝!歴代最多へ「3」 王手から5戦足踏みも「ついに」 

[ 2017年1月30日 05:30 ]

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子第12戦 ( 2017年1月29日    ルーマニア・ルシュノブ )

W杯通算50勝を達成し、撮影に応じる高梨沙羅=ルシュノブ
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 お待たせ!高梨が鮮やかな逆転でW杯通算50勝目に到達した。W杯総合で首位に立つ高梨沙羅(20=クラレ)は1回目2位だったものの、2回目に最長不倒となる97・5メートルを飛び、合計247・3点で6戦ぶりの今季6勝目。男子のグレゴア・シュリーレンツァウアー(27=オーストリア)が持つ歴代最多の通算53勝まで残り「3」とした。今季3勝を挙げ総合2位につける伊藤有希(22=土屋ホーム)は224・1点で4位に入った。

 高梨の顔に浮かんでいたのは、喜びより安堵(あんど)の表情だった。「やっと50勝目を迎えられてホッとしています。今の状態でいいジャンプをしようと思っていたけど、最後のジャンプが一番良かったので、いい方向に向かうと思います」。海外報道陣の質問への答えに口をついた「FINALLY(ついに)」という言葉が、その苦しみを端的に表していた。

 世界の空を支配してきた女王が、勝利に見放されること5戦。試練を乗り越えた末にたどり着いた85戦目での50勝到達だ。W杯6戦5勝で迎えた国内大会は4戦連続で“定位置”には立てなかった。助走で重心が後ろにいき過ぎて調子が狂い「感覚を失いかけた」と歯車を元に戻すことができなかった。

 それでも、修正に向けての努力をやめないのが女王たるゆえんだ。優勝を逃し続けた帰国中、自らのジャンプの映像を何度も何度もチェック。国内最終戦となった蔵王大会2日目の2本目は「テレマークをしっかり入れられたし、次のW杯につながるジャンプができた」と復調の手応えを得た。2季前に6戦連続で勝てなかった時も、ストップをかけたのがルシュノブ。ジャンプ台との相性の良さも後押しした。

 見つめたのは自らのジャンプだけではない。男子W杯53勝のシュリーレンツァウアーの映像を見てイメージづくりに役立てた。特に高梨が脳裏に焼き付けたのは09年12月のW杯リレハンメル(ノルウェー)大会で王者が見せた150・5メートルの伝説の大ジャンプ。「もの凄い飛距離は見ていて楽しいと思う。記録も目指したいが、記憶に残るジャンプもしたい」。W杯勝利数で唯一、目標となるべき姿に感化され、自らのモチベーションを高めてきた。

 「試合が続いてなかなか何本も続けて飛ぶことができないけど、試合で飛びながらいい方向に行けばいい。次はまたジャンプ台が変わるので、そこに合わせていきたい」

 今季最大の目標となる世界選手権は来月22日、フィンランド・ラハティで開幕するが、その前のW杯は6戦。男女を通じたジャンプW杯最多勝記録まで3勝と迫った高梨にとって、W杯で金字塔を打ち立てることが、まだ手にしたことがない世界選手権個人戦の金メダル獲得につながる。そして、その偉大な足跡こそ、来年2月の平昌(ピョンチャン)五輪へ弾みをつけることを、高梨本人が一番分かっている。

 ▼データ

 高梨がW杯通算50勝を記録した。初優勝は12年3月3日の蔵王(山形)で、それから約4年11カ月でのスピード達成となった。

シーズン別の勝利数は

11〜12年=1勝

12〜13年=8勝

13〜14年=15勝

14〜15年=6勝

15〜16年=14勝

16〜17年=6勝

 最多連勝は15〜16年シーズンの10連勝で驚異的なぺースで白星を重ねてきている。初優勝後の連続未勝利は14〜15年シーズンの6試合。今回、優勝を逃せば自己ワーストに並ぶところだった。

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