心温まるツォンガへの手紙 世界が称賛した“紳士的対応”から1年…

[ 2017年1月30日 13:09 ]

ジョーウィルフリード・ツォンガ(AP)
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 4大大会は2週間続く長い戦いだ。大会が煮詰まってくれば試合も一層息詰まる熱戦続きになる。取材する側だって疲れもたまれば、気もささくれ立ってくる。そんな中、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)が4回戦の後にツイッターに上げた一枚の手紙の画像が心を温かくしてくれた。

 その手紙にはこう書いてあった。

 ツォンガ様

 昨年の2回戦、コート上で助けていただいたことへのお礼を言いたいと思っていました。覚えてらっしゃるか分かりませんが、私はあなたがコートの外までエスコートしてくれたボールガールです。

 手紙の送り主であるジュリアナさんは、昨年の全豪オープンでボールキッズを務めていた。2回戦の第3セット、自らのサービスゲームでボールを要求したツォンガは異変に気づいた。彼女が涙を浮かべ、立ちすくんでいたからだ。ツォンガはすぐに係員を呼び、腕を抱えてコートの外まで案内したのだった。

 あの時、ボールをお渡しすることができず申し訳ありませんでした。自分では気づいていなかったのですが、ウイルス性の風邪をひいていて、ふらふらしてめまいがしたんです。

 ボールキッズに求められるハイスタンダードな務めを果たすことができず、申し訳ありませんでした。

 気高い責任感と感謝の思いがにじんだ手紙は、ツォンガの4回戦勝利の祝福とさらなる勝ち上がりを期待する言葉で締められていた。「ジュリアナ 全豪ボールキッドNo.180」という署名を添えて。

 残念ながらツォンガは準々決勝でバブリンカ(スイス)に敗れて大会から姿を消した。試合中には相手とのトラッシュトークがあるなど、少し後味の悪い敗戦だったはず。だが、この手紙についての話になると険しいオーラはすぐに消えた。

 「別に特別なことをしたわけじゃないんだ。彼女の様子を見て、コートの外に連れ出しただけだから。世界を救ったわけじゃない。でもあんな手紙をもらえて本当にうれしかった」

 そう話すツォンガの顔にいつもの優しそうな笑みが広がった。(雨宮 圭吾)

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2017年1月30日のニュース