NFLペイトリオッツのQBブレイディーが“トランプ問題”に直面

[ 2017年1月30日 08:30 ]

ペイトリオッツのQBブレイディー(左)とトランプ米大統領(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】あまりにも多くのニュースがあったので目立たなかったが、米国のドナルド・トランプ新大統領は就任式の当日(1月20日)、スポーツ界に大きな影響を与えるコメントを残していた。NFLスーパーボウル(2月5日=ヒューストン)に出場するペイトリオッツのロバート・クラフト・オーナー(75)が式典に出席していることと、チームの大黒柱でもあるQBトム・ブレイディー(39)が電話で祝福してくれたことをスピーチの中で明らかにしていたもので、政治的な騒ぎが一段落したあたりで、これがじわじわとメディアで騒がれるようになった。

 最初に食いついたのはペイトリオッツの地元ボストンのラジオ局「WEEI―FM」だった。AP通信によれば「本当に電話したのですか?」とブレイディーを直撃したようで、この質問の裏には「あなたはトランプ派?それとも反トランプ?」といった現在、米国を二分する“属性”を問いただす意図が見え隠れしている。

 スーパーボウルに限らず、プロスポーツ界の王者を決める試合では、それぞれの地元ファンが「おらが町のチーム」に声援を送るのが当たり前の光景。ただし今、トランプ大統領への支持、非支持を明らかにしてしまうと、ライバル・チームの地元ファン以外に全米規模(世界規模?)で多数の“敵”を作ってしまう可能性がある。なのでブレイディーはのらりくらりと、このようにメディアからのプレッシャーをかわしていた。

 「そうですよ。電話しましたよ。過去の話ですけどね。時々彼が電話して、私も時々電話をします。16年前からの知り合いですしね。ただそれが何か重大な問題なんでしょうか?あなたがもし誰かと知り合いになったとして、その人の言うことにすべて同意するわけでもないでしょう」

 さすがにスーパーボウルで過去4回優勝を飾っている名QB。うまく逃げたとも言えるが、感情的にならなかったあたりは評価できると思う。

 今季はボールの空気圧不正事件で開幕から4試合の出場停止処分を科せられており、ここで対応を誤ってしまうとさらなるイメージ・ダウンは避けられない。しかし目下のところ、この問題は炎上までには至っていない。もちろん対戦するファルコンズのファンの中に潜んでいる反トランプ派は黙っていないだろう。突っ込みどころを与えてしまったとも言えるだけに、フィールド外からの“タックル”には気をつけた方がいいかもしれない。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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2017年1月30日のニュース