福士14位「金メダル獲れなかったー」集大成レースで泣き笑い

[ 2016年8月15日 05:30 ]

キリスト像が立つコルコバードの丘をバックに力走する田中智美(左)と福士加代子(共同)

リオデジャネイロ五輪 女子マラソン

(8月14日)
 女子マラソンが14日に行われ、日本は4度目の五輪で初マラソンに挑んだ福士加代子(34=ワコール)が2時間29分53秒で日本人最上位の14位に終わった。田中智美(28=第一生命)は19位、伊藤舞(32=大塚製薬)は46位だった。日本勢は野口みずきが金メダルを獲得した04年アテネ五輪を最後に、3大会連続で入賞を逃した。優勝は2時間24分4秒のジェミマ・スムゴング(31)で、同種目でケニアに史上初の金メダルをもたらした。

 両手を上げてゴールしたのは、せめてもの意地だったのか。ゴール直前に1人を抜いたのは、ランナーとしての執念と本能だったのか。福士が14位でフィニッシュ。メダルを期待された初めての五輪マラソン、集大成のレースは惨敗に終わった。

 「金メダル獲れなかったー。ホント、しんどかったー」

 レース後、天真らんまんな福士らしく、絶叫し、そして泣き笑いした。強い日差しの中、一度は先頭集団から離されながら、再び食らいついた。21キロ手前から失速…。それでも、最後の最後まで諦めなかった。

 「金メダルを獲るために来たから、最後まで頑張りました」

 トラックの女王の異名を取る天性のスピードを持つゆえにマラソンで苦しんできた。初挑戦だった08年1月の大阪国際は30キロすぎで大失速。スタミナ切れで合計4度転倒し「生まれたての子鹿になっちまいましたね」と自嘲した。

 普通の選手ならば力を抑えられるところで抑えられない。シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんは「スピードが体に染み込んでいる彼女の場合は、速すぎるがゆえに力を使い切ってしまっていた」と語っていた。ロンドン五輪選考会も失敗。初マラソンから7年が過ぎ、今回ようやく憧れの舞台にたどり着いた。

 しかし、強い日差しを浴びながらのリオ路は予想以上に過酷だった。挫折と故障を乗り越えてきた天才ながら、公言していた「世界の1等賞」を獲ることはできなかった。だからといって、福士に悔いや、やり残した思いはどこにもない。レース直後に「こんなに頑張ってきた自分を褒めてやりたい。特別な時間でした」と振り返ると、今後のマラソン挑戦を問う声にも「もう、やんねー」と繰り返した。全力で駆け抜けた42・195キロ。日本女子マラソンの復活に足跡はしるせなくても、記憶に残るランナー、福士加代子は日本列島に鮮烈な姿を焼き付けた。

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