ラグビー日本代表から漏れたSH内田の本音「自分が出たいが…」

[ 2015年9月9日 09:30 ]

昨年5月の香港戦でトライを決めたSH内田啓介

 その数日間、どんな思いで息を潜めていたのだろうか。

 W杯イングランド大会に臨むラグビー日本代表メンバー31人が、先月31日に発表された。その時点で候補に残っていたのは39人。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチが会見で明かしたように、宮崎で最後の合宿中だった26日には個人面談で8人に落選を伝え、ほとんどの選手がその日の午後に宮崎を離れた。

 代表が本番前最後のテストマッチとなったジョージア戦で逆転勝利(13―10)を収める数時間前、トップリーグのプレシーズンリーグのホンダ戦(秩父宮)に先発出場したパナソニックのSH内田啓介も、その1人。空路東京へ戻り、チームが本拠を置く群馬県太田市へ。しかし、大っぴらに外を出歩けば、正式発表の前に事実が公になってしまう。「発表前に自分が表に出てしまうとおかしなことになるので…」。週明けまでは、普通の生活もできなかったという。

 「ふと、1人になると、いろいろと考えてしまって。公式発表までの間は、それまでの4年間を思い出した。“何であの時、ああしてこなかったんだろう”とも思いました」。内田のパスの飛距離、身体能力など、代表でレギュラーを張る田中史朗(パナソニック)も「僕より能力が高い」と常々口にする。しかしW杯メンバーに選ばれたのは、11年W杯も経験している田中と日和佐篤(サントリー)の2人。FWとバックスのつなぎ役で、スタンドオフとともにフィフティーンの核となるポジションだけに、スキルとともに重要なのが経験値。4年間で代表戦出場は15試合(非テストマッチを含む)、うち先発は3試合(1試合はウイング)という経験の少なさが、当落の分かれ目だったことは間違いない。

 いよいよ9日後に開幕するW杯。13人が選ばれたバックアップメンバーに入った内田は「いつ呼ばれてもいいようにしている」一方で、「ベストはケガ人が出ずに僕が呼ばれないでいること。本音は自分が出たいが、ケガしてくれとかは思えない」とも言う。07年W杯では今大会でもバックアップに選ばれた矢富勇毅(ヤマハ発動機)がフィジー戦で負傷し、バックアップ選手が招集された例がある。

 いくらそのつもりで準備していても、一度途切れた緊張感を再び張り直すのは容易ではない。呼ばれるか呼ばれないかも分からない試合に向けて、モチベーションを高めるのは不可能に近いだろう。それでも、何が起きるか分からないのが、4年に一度のラグビーの祭典。日本に残った13人のバックアップメンバーたちにとっても、勝負の1カ月半が幕を開ける。(阿部 令)

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2015年9月9日のニュース