×

冨田は最後まで技の「美」にこだわった

[ 2008年8月20日 06:00 ]

 【北京五輪 体操】着地が乱れ、2大会連続の種目別のメダルが消えた。体操男子種目別決勝の鉄棒で、冨田洋之(27=セントラルスポーツ)は着地に失敗し、15・225点の6位に終わった。冨田は04年アテネ五輪平行棒の銀メダルに続く種目別のメダルを狙ったが、届かなかった。中瀬卓也(25=徳洲会)は15・450点で5位。女子種目別平均台の鶴見虹子(15=朝日生命ク)は8位だった。

 冨田は最後まで本領を発揮することはできなかった。F難度のコールマンを完ぺきに決めて、ラストはおなじみの伸身の新月面。だが、着地でバランスを崩し、左ひざ、左手をついてしまった。「結果どうこうより、自分の演技をして終わりたかった。失敗して複雑ですね」。6位に終わったことよりも、美しくない着地に悔しさが残った。
 日本のエースに北京五輪は苦しい戦いだった。団体総合予選で調子が上がらず、内村、坂本に次いで日本人3番手。各国・地域2人までしか決勝に進出できないが、実績で坂本に代わって個人総合決勝に出場した。結果は4位。種目別あん馬も5位で、メダルは団体総合の銀1つに終わった。
 今後について「精神的にも肉体的にもゆっくりしたい」と明言せず、9月の社会人選手権出場も「分からない」と話した。難しい技を多く入れた者が勝つ現代の体操。難度よりも美しさで勝負を挑んできた男は、最後に言った。「美しさも同じように感じてもらって得点に反映されるようにしてほしい」。寡黙な男の悲痛な叫びだった。

続きを表示

2008年8月20日のニュース