羽生九段は「研究量」で最先端の戦い挑む可能性 32歳差…経験値で圧倒的有利も 谷川17世名人が展望

[ 2023年1月21日 05:25 ]

王将戦7番勝負を読む 谷川浩司17世名人EYE

揮毫(きごう)した紙を手にする羽生九段(左)と藤井王将(撮影・岸  良祐) 
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=の先勝で迎えた王将戦第2局高槻決戦。王将4期の谷川浩司17世名人(60)が、第1局を解説するとともに第2局を展望した。

 第1局、羽生は大方の意表を突く一手損角換わりを繰り出して敗れた。角交換が4手目の一手損は9カ月前にあるが、8手目は羽生にとって約3年ぶりの採用。戦前、羽生が後手で長年愛用する横歩取りの可能性を指摘した谷川も「確かに、予想できませんでした」と明かした。

 では勝率上、羽生が若干有利な先手に移る第2局はどうか。「角換わりなのか相掛かりなのか」と予測し、昨年末のある光景を回想した。

 12月25日に行われた準公式戦「サントリー将棋オールスター東西対抗戦2022」で、羽生は藤井と3勝3敗で迎えた最終戦のリレー対局で敵味方に分かれて対戦した。羽生は永瀬拓矢王座(30)と、藤井は豊島将之九段(32)とコンビを組んだ。

 1手20秒、5手ごとに交代という早指し戦。戦型は最新型の角換わり腰掛け銀に進んだ。3人中、最高齢の豊島と比較しても20歳年長の羽生。解説で出演した谷川は「研究量と瞬発力が問われる戦いでした。羽生さんは前例がなくなった中盤以降も最善手を指し続けました」と充実ぶりに驚いた。

 羽生の挑戦権獲得後、戦型選択同様に注目したポイントが「最先端か、経験値を生かす戦いか」だった。32歳の年齢差がある両者。もちろん羽生に随一の経験値があるのは確かだが、「藤井さんも2日制8時間なら対応してくる」。であるなら東西対抗戦でも実証した研究量で「最先端の戦いを挑む可能性はある」と見立てた。

 第1局については「桂2枚を使って挟み撃ちする構想が素晴らしかった」と藤井を称えた。2日目の対局再開すぐ、羽生陣に打ち込んだ47手目▲4三銀。自身の飛車を犠牲にする間に、この銀で金、桂を捕獲してさらに成銀となって羽生陣の右辺を制圧した。

 さらに左辺の支配をもくろんだ63手目▲7七桂(A図)。この挟撃態勢を、「▲4三銀のところから2枚桂の活用を思い描いていたのでは?」とみた。

 藤井将棋における角、桂の使い方に特徴があるのは、詰め将棋の創作を趣味とする藤井の「詰め将棋作家特有のひらめき」とする。同じく詰め将棋作家としても活動する自らとの共通点を見いだし、この▲7七桂にちょうど1時間消費したことから「この手で寄せまで読み切ったのかなという気がします」と語った。羽生の投了は91手目。28手先の世界を把握する、読みの量と正確性に力の源泉を見たという。 (構成・筒崎 嘉一)

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