日本独自の移籍制度確立を 実現したことに大きな意義、改善重ねて実効性を高めて

[ 2022年12月10日 05:00 ]

現役ドラフト

現役ドラフトこの日の流れ
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 【記者の目】まず第一歩を踏み出さなければ、何も始まらない。史上初めて開催された「現役ドラフト」は、その実効性は置いておいて、とにかく実現したことに大きな意義を感じる。

 第1回の開催では12球団で12件の移籍が決まった。この事実は大きい。過去、一度にこれだけ多くのトレードがまとまった例はない。古くは同様の趣旨から、70年から72年に選抜会議(トレード会議)、90年はFA制度の代案としてセレクション会議が2度行われたが、いずれも定着しなかった。

 日本球界では、トレードには「放出」という言葉で表現されるようにネガティブなイメージがあった。それが今はFA制度の定着などにより、新天地で活躍の場を与えるというポジティブな考え方に変わりつつある。そうした流れもあり「現役ドラフト」は「埋もれた選手に活躍の場を」との趣旨から実現した。守備位置の関係などで、キャリア全盛期の活躍を逃す選手を出してしまうことは、球界全体の損失という考え方もある。開催時期を保留者名簿提出後とし、指名方式も有力な選手がリストアップされるように工夫された。その趣旨を理解し、上位の指名順を狙って4人もリストアップした球団もあったという。

 一歩を踏み出し、選手会が求める移籍の活性化は確かな前進を示した。今後は、どう実効性を高めていけるか。検証し、改善し、回数を重ねることで大リーグにはない、日本独自の移籍制度が確立されることが期待される。来年、再来年と埋もれた選手がより多く活躍の場を得ることを願う。(専門委員・秋村 誠人)

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