野球と農業と介護 地域の活性化や社会貢献へ 世代を超えた地域密着型のイベントが誕生

[ 2022年12月6日 07:30 ]

 11月18日、埼玉県上尾市にある「上尾ケアセンターそよ風」は活気にあふれていた。BCリーグ・埼玉武蔵ヒートベアーズの選手たちが、施設利用者や関係者とともに農園で野菜を収穫していた。青木玲磨外野手は「お客さまが喜んでくれ、元気をもらった。地域のファンの方の愛も感じた」と笑顔を浮かべた。

 約半年前に選手が施設利用者と一緒に苗を植え、この日のために大事に育ててきた。順調に成長したネギとサツマイモを前にし、参加者の目も輝いていく。収穫したネギを使った昼食をともにし、午後からは野菜の即売会も実施。販売開始から1時間足らずで完売という盛況ぶりに「普段は土に触ることもなくなった。昔を思い出して楽しいよ。また来たい」と施設利用者にとっても充実した日となった。

 野球と農業と介護―。それぞれは全く異なる分野だが、それを組み合わせることで世代を超えた地域密着型のイベントが生まれた。太田大和投手は「農作業もだけど、販売などいろいろな経験ができてうれしい。野菜を売ることって簡単じゃないと思った」と普段とは違うフィールドで貴重な経験を積んだ。施設利用者にとっても、外出機会が減り、病気ではないが介護などが必要になるほど心や体の働きが低下するとされる「フレイル」の進行予防が期待される。

 主催したのは「ユニマット リタイアメント・コミュニティ」。同社未来ビジネス開発部は「選手のパワーでお客さまをサポートすることもあれば、お客さまの方が農業知識を選手に伝える場面もあります。介護×スポーツ×農業だからこその相互関係、社会参加の形だと実感しています」と話す。今後は継続するだけでなく、新たな仕掛けも模索するという。枠を超えたさらなる展開は、地域の活性化や社会貢献にもつながっていく。(記者コラム・川手 達矢)

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2022年12月6日のニュース