ロッテ・井口監督は「恐れ」を抱いたのだろうか

[ 2022年5月2日 08:30 ]

ロッテ・井口監督
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 4月が終わった。開幕を迎えたプロ野球界の話題。セ・リーグは歴史的な低迷となった阪神だろうか。パ・リーグは何と言ってもロッテの佐々木朗希投手。10日のオリックス戦で日本記録の13者連続奪三振を成し遂げただけでなく、プロ野球16人目、史上最年少での完全試合を達成した。

 17日の日本ハム戦でも8回まで打者24人で抑える完全投球。そして24日のオリックス戦では判定に不服な態度を取ったとして、白井一行球審に詰め寄られる。ある意味、完全試合以上の大騒動になった。翌25日には疲労蓄積でリフレッシュのために出場選手登録を抹消。まさにジェットコースターのような4月だった。指揮を執り、そして選手を守る立場である井口資仁監督の心中も、同様に激しく上下を繰り返したのではないか。

 17日の日本ハム戦。指揮官は0―0の8回で佐々木朗をマウンドから下げた。9回を抑え、その裏に味方がサヨナラ勝ちすれば「2試合連続完全試合」という、おそらく2度と達成されないであろう大記録となっていた。その可能性を捨ててまで交代させた井口監督の心の中には「恐れ」のようなものがあったのではないだろうか。

 佐々木朗の投球回数は、8回を終えた時点で両リーグトップの31イニングに達していた。入団から2年間、大事に育ててきた投手がいきなり最多の投球回。それまでの育成方針からすれば「異常事態」だ。ファンも、味方ベンチも、相手チームも、誰もがその異次元の投球に目を奪われている中で、井口監督は気付いたのだろう。投げすぎだ。危ない、と。

 チームだけの問題ではない。今や佐々木朗は球界の宝と言っていい。もし故障することになったら…。井口監督は「恐れ」を抱いたのではないだろうか。自分が同じ立場だったらと考えると、足元から恐怖のようなものが、はい上がってくる気がする。

 佐々木朗は20歳。まだ大学3年生の年齢だ。成長の度合いは人それぞれだが、まだ体は完成しきっていないだろう。積んでいるエンジンが大きいだけに、1年間ローテーションを守る体力もまだないはず。17日の交代劇は、まさに井口監督の英断だったと思う。(記者コラム・鈴木 勝巳)

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2022年5月2日のニュース