30年前は松井秀喜3発、花巻東・麟太郎ゴジラ伝説再現へ センバツ30年ぶり開幕雨天順延

[ 2022年3月19日 05:30 ]

甲子園に表示されたセンバツ雨天中止のお知らせ(撮影・成瀬 徹)
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 【秋村誠人の聖地誠論】甲子園で開幕予定だった第94回選抜高校野球大会は18日、天候不良のため開会式を含めた3試合が順延となった。選抜大会で初日が雨天順延となるのは92年以来30年ぶり。大会日程は13日間のまま、決勝は31日に変更となった。入社37年目、85年夏からの甲子園取材歴があり、高校球児でもあった本紙・秋村誠人専門委員(59)の連載「聖地誠論」で、今大会と92年春を重ね合わせた。

 冷たい雨が甲子園に落ちていた。上着もいらなかった前日から一変。開会式と3試合が順延された。開幕日の開会式を含めた雨天順延は、実に30年ぶりだった。

 30年前。92年の第64回大会。ラッキーゾーンが撤去されたのがこの年から。金属バット導入で激増していた本塁打は大幅に減った。前回大会の18本から7本。そんな中、スタンドまで3本のアーチを架けたのが星稜(石川)の松井秀喜だった。ラッキーゾーンがなくても「僕には関係ありません」と言った通り。個人の大会通算3本塁打は今もセンバツ最多タイ記録だ。衝撃的な飛距離は今も記者の脳裏に残っている。

 「彼だけは別格だったね。本当にラッキーゾーンなんて関係なかったよ」。そう語るのは、この大会で優勝した帝京(東京)を率いた前田三夫監督(現名誉監督)。前年秋の明治神宮大会決勝で対戦し「何回か敬遠したけど、最後に勝負させたら神宮第2球場の右中間フェンスに弾丸ライナーでぶつけられた」という。甲子園での対戦はなかったが名将の脳裏にも「ゴジラ」の猛打は焼き付いている。

 その松井以外は「広くなった」と感じた甲子園で、帝京は優勝した。伝統の打棒は影を潜めて5試合で本塁打なしで計15得点。エース・三沢興一(現巨人2軍投手コーチ)が獅子奮迅の活躍で計619球で全5試合完投、2回戦から何と4日連投だった。準決勝まで496球。1回戦から決勝がちょうど1週間で「今の球数制限(1週間内で500球)なら三沢は投げられなかったから。今思えば、よく勝てたなと」と前田名誉監督は言った。

 あれから30年。同じように開幕日が雨で流れた。30年前にも兵庫の神戸弘陵が出場辞退し、育英が急きょ出場した。この春は、花巻東(岩手)に佐々木麟太郎(2年)がいる。昨秋の明治神宮大会で強烈な打撃を見せた怪物。かつての松井のように。どんな大会になるのか。甲子園に落ちる雨に、期待が増してきた。(専門委員)

 ▽92年の選抜大会 ラッキーゾーンが撤廃されて初めての大会。星稜(石川)の松井秀喜が開幕戦だった宮古(岩手)との1回戦で3ランを2発放つなど、大会最多記録に並ぶ3本塁打を放ち8強入りした。決勝は「4番・投手」の三沢興一を擁した帝京(東京)が3―2で東海大相模(神奈川)を下し、初の紫紺の大旗を手にした。

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