【京都】京都共栄“神前マジック”でついにベスト4 小技で決勝点、背番10が初完封

[ 2019年7月24日 15:55 ]

第101回全国高校野球選手権京都大会 準々決勝   京都共栄3―0峰山 ( 2019年7月24日    わかさスタジアム京都 )

<京都共栄-峰山>勝利後に整列する京都共栄・神前俊彦監督(中央)
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 0―0で5回を終えたグラウンド整備の時間、京都共栄・神前(かみまえ)俊彦監督(63)は選手たちを集め「よーく、ミスが出たなあ」と語りかけた。

 5回まで送りバント失敗が2度、内野ゴロの連続失策、許盗塁、与四球……。ふだんから選手に言い聞かせている「自ら負けにいくミス」が並んでいた。

 「それでも、これだけミスが出て、まだ0―0なんや。さあ、これからやぞ」

 そんな監督の激励に応える先取点は6回に転がり込んだ。死球、バント、左前打の1死一、三塁から二盗が入って二、三塁。4番・岡田大夢(ひろむ=3年)が高めボール球を叩きつけたゴロは二塁左に転がった。「ゴロゴー」の指示に三塁走者・山本大誠(3年)が本塁へ突入し、送球をかわして生還した。

 捕手ながら1番を打つ山本は走塁面も期待されていた。「ボールだったので少しスタートが遅れたかもしれません。でも、送球も少しそれたのでラッキーでした」。謙遜するが、巧みなスライディングは光っていた。

 さらにけん制悪送球で2点目をあげて、峰山は投手交代。1死一、二塁で背番号1の藤田諒太朗(3年)が登板した。

 打者・正木友統(ゆうと=3年)へ、神前監督のサインはセーフティーバント。三塁側を狙って構え、初球ボールを見送った。正木は「投手は三塁側に降りるし、三塁も結構前にいた。これは反対側を狙うべきだ」と判断。2球目、投手と前進する一塁手の間に強めのプッシュバントを転がし内野安打。二塁から3点目の走者が還った。

 正木は「今日は狙い通りでした」と話した。「でも練習試合では何度も失敗していたんです。プッシュって言いますが、押しちゃダメで、バットの芯に当てる感じでやるのがコツ、ですかね」
 神前監督が「あの3点目が大きかった」という殊勲のバント安打タイムリーだった。

 投げては背番号10の右腕、永川(えがわ)聖人(3年)が5安打で完封をやってのけた。練習試合でも完投さえしたことのなかった永川だが、得意のカーブ、スライダーで丁寧に外角を突いて投げきった。

 救援投手を準備させていた神前監督は「7回を終えた時「どうや?」と聞くと永川は「最後まで投げさせてください」と言った。「ふだん、はっきり物を言わない子がきっぱりいった。その気概に賭けました」

 9回表に連打で無死一、二塁を背負うと、伝令にきた背番号1の本城楓己(ふうき=3年)が「オレはいつも9回投げてるぞ」と励まされ、併殺と凡飛で小さくガッツポーズした。

 永川は今年から、神前監督の助言で上手投げからスリークオーターに変えた。神前監督は相手の峰山打線は先発9人が全員右打者とあって、永川先発を決断したという。捕手の山本は「結構スイングしてくる打者、引っ張りの打者が多い。外角中心に攻めれば大丈夫かな、と思った」と配球も決まった。

 永川はこれで今大会全4試合に登板し、23回1/3を1失点と安定感は抜群だ。

 京都共栄の夏ベスト4は2015年以来4年ぶり。2016年5月就任の神前監督は初めてだ。

 準決勝の相手は昨年夏、今年春と、ともに同じスコア3―10と完敗している京都国際。神前監督は「相手との力量は雲泥の差がある。自分たちは弱いチームだが、少しでも差を縮めて、何とか食らいついていければ……」と話した。

 1982(昭和57)年、大阪府立の母校、春日丘を率い、甲子園出場を果たした。同年春の選抜優勝、PL学園など強豪を連破して話題を呼んだ。

 この日も見せたバントや走塁など小技を駆使する攻撃は“神前マジック”と呼ばれる。主将の山本は「監督さんは熱い男です」と言った。「すごく野球が好きで、一生懸命です。僕たちを強くしてくれました。だから……」。まだまだ熱い夏、夢の続きがある、と信じている。(内田 雅也)

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