高田高・伊藤コーチの夢 子どもたちのため“安心して暮らせる家を”

[ 2017年3月12日 08:21 ]

復興へのプレーボール

災害公営住宅(後方)に暮らす高田高・伊藤新コーチと美穂香夫人。長男・宗志くん、次男・賢志くんと4人笑顔で暮らす
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 高田高校野球部の伊藤新(あらた)コーチ(45)は昨年8月、陸前高田市内の仮設住宅から同市高田町の災害公営住宅に移り住んだ。震災当時は同市内のアパートに夫婦で暮らしていたが、津波で全壊。同年5月に長男・宗志(そうし)君(5)、14年6月には次男・賢志(けんし)君(2)が誕生する中、約5年間、仮設住宅で生活してきたが現在は3DKの部屋に家族4人で暮らす。

 災害公営住宅とは、震災で住宅を失った人向けに建設された公営賃貸住宅。仮設住宅が無償で住めるのに対し、災害公営住宅では家賃が発生する。家賃は入居者の収入などによって決まり、年間所得の変化に応じて毎年改定される。伊藤家も、4月からの家賃は昨年度よりも値上がりすることが決まっている。

 岩手県の場合、災害公営住宅入居から3年後に一定額の月収を超えた世帯は、割増料金が発生するとともに「住宅の明け渡し努力義務」が生じ、「3年で退去しないといけないという不安は大きい」。さらに仮設住宅では近所同士で声を掛け合うなど、コミュニケーションが取れていたが「今はそれもない」と明かす。入居を辞退した人も多く、陸前高田市内の災害公営住宅の空室率は22%に上る。

 来年4月、宗志君は小学校へ入学する。「将来的には自分の家を建てたいし、子供たちには、もっと自由になってほしい。普通に歩いたり、自分で買い物に行ったりとか。大人になったとき、ここに住んで良かったと思えるような状況をつくってやりたい」。伊藤コーチは、そんな日常が戻ってくることを願っている。 (原田 真奈子)

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2017年3月12日のニュース