台所事情苦しい巨人 もう一度、あの右腕の先発が見たい

[ 2016年5月9日 12:00 ]

現在は中継ぎを務める巨人・宮国

 内海、大竹の不調。マイコラス、ポレダという助っ人投手陣の離脱もあり、投手、特に先発陣の台所事情が苦しい由伸巨人。4月には平良、そして5月6日の中日戦(東京ドーム)では長谷川、と1軍デビュー組が抜てきされた。その度に「もう一度、彼の先発する姿を見たい」と頭に浮かぶ投手がいる。宮国だ。

 5年目を迎えた昨年から中継ぎに転向した。39試合に登板。先発時と変わらないテンポの良い投球で、シーズン終盤には均衡した試合でもマウンドを託された。3勝1敗、防御率2・94という数字以上に期待をかけられ、結果で応えた。「最初は試合への向かい方が難しかったですが、周りの先輩を見て、少しずつ慣れました」と振り返る。

 今季は不振で出遅れたが、4月17日に1軍登録されると、ここまで中継ぎで6試合に登板。防御率3・68とまずまずの成績を残している。ただし満足感はない。「もっと信頼されるようになりたいです。結果を出して(勝利の方程式に)つなぐ役割を任せてもらえるようになりたいですね」。現状、中継ぎ内での役割は、昨季に比べるとやや信頼が低い。接戦では右横手投げの田原が一番手として上がり、ロングリリーフもできる宮国は敗戦が濃厚となった場面での起用も多い。目の前に浮かぶ個人的な目標は「中継ぎ1番手」にある。

 10年のドラフト2位で入団。当時の球団関係者の中には「10年に一人の逸材」と絶賛した人もいた。英才教育を施され、1年目は2軍でじっくりと育成。実戦でも計19イニングで自責点0と評価に違わぬ才能をみせた。そして、2年目だ。4月8日の阪神戦(甲子園)で1軍先発デビュー。7回1失点で白星をあげ、本紙評論家の槙原寛己氏以来、29年ぶりに初登板初勝利の偉業を成し遂げた。

 何よりも、敵地での伝統の一戦に臆することなく、テンポ良く、淡々とストライク先行で投げ込んでいった。その勇姿に甘いマスクも重なり「新しいスターの誕生か」と期待した人も多いはずだ。さらに5月1日の広島戦(東京ドーム)でプロ初完封。まだ成長過程とあって右肩違和感での離脱もあったが、並の投手にはない大きな期待感を十分に抱かせたものだ。

 その後は伸び悩み、チーム事情と本人の適性を踏まえた中継ぎ起用に至った。14年10月6日の広島戦(マツダ)を最後に、先発マウンドから遠ざかる。目指す中継ぎエースの先に、先発復帰の道があるのか。当の宮国本人は「今は与えられたところで結果を出すことだけを考えて投げています」と一日一日を過ごしている。11日の阪神戦(甲子園)では、不振で2軍調整中だった内海が今季1軍初登板初先発を予定している。6月上旬にはマイコラスも戻るだろう。

 それでもあの1軍デビュー戦は忘れられない。今季に限らず、またいつか、真っ白なマウンドに上がる背番号30が見たい。(記者コラム・川手 達矢)

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2016年5月9日のニュース