ヤクドラ1原樹、母の日に好投2勝目 母観戦の甲子園で虎手玉

[ 2016年5月9日 05:39 ]

<神・ヤ>甲子園で2勝目を挙げた原樹はファンの声援に応える

セ・リーグ ヤクルト5―1阪神

(5月8日 甲子園)
 ヤクルトのドラフト1位ルーキー・原樹理投手(22)が8日の阪神戦で2勝目。全国ベスト8となった東洋大姫路3年夏以来“5年ぶり”の甲子園で6回2/3を投げ、4三振を除く16アウトの12個を内野ゴロで奪う技ありの投球で4安打1失点に抑えた。地元兵庫で迎えた母の日の一戦。観客席に駆け付けた母に、白星を贈った。

 マウンドの姿はシュートで果敢に内角をえぐる強心臓だが、性格は繊細だ。「阪神ファンに“帽子取れ”ってヤジられて。帽子取ったんですけど…」。報道陣に囲まれた原樹は2勝目を喜ぶよりまず先に、4回に原口に与えた死球を振り返って苦笑いを浮かべた。

 母の日。三塁側のアルプススタンドで投球を見守った母・美幸さん(53)は白星の予感があった。東洋大姫路で甲子園に出場した3年夏。「負けた準々決勝(光星学院)は一塁側だったけど、勝った2回戦(対海星)、3回戦(対新湊)は三塁側で応援していたんです。今回チケットをもらった時にいいことがあるかもって」。1月3日に迎えた53歳の誕生日で三男坊の原樹と次男・理恵(ちさと)さん(27)にプレゼントされた腕時計を持参して甲子園へ。両手を握りしめて白星を祈った。

 原樹の小、中学生時代。美幸さんはグラウンドと自宅を車で送り迎えしていた。試合に打ち込まれると泣いて「野球をやめたい」と漏らした。励ますこともあれば、「監督に直接やめたいと伝えなさい」とつらい気持ちを抑えて突き放すこともあった。東洋大姫路の1年秋から半年間以上、右肘痛で投げられなかった。兵庫県加古川市の自宅から大阪の病院まで車で連れて行った日々。「あの時があるから今があると思う」。自宅でテレビ観戦した1日の巨人戦(神宮)はピンチの連続に目を背け、台所に駆け込んで心を落ち着かせた。プロ初白星に涙を流したが、この日はマウンドから目を離さなかった。

 原樹も母の期待に応えた。カットボール、スライダー、シュートと横の揺さぶりに加えて時折交ぜるカーブで緩急もつけ、6回まで先頭打者を一度も出さなかった。7回に敵のドラフト1位・高山に適時打を浴びて降板したが、最少失点で先発の役割は果たした。母の日は、球団も10年以来6年ぶりの白星。「今まで母の日で特別なことをしなかったけど、今日初めて感謝の気持ちを表すことができた。本当にいい日になった」。母にとっても、チームにとっても、自慢の孝行息子だ。(平尾 類)

 ▼ヤクルト・中村(原樹は)カーブを大胆に投げて緩急をつけられたことが良かった。6回は少し落ちたけど、直球の強さもあった。

 ▼ヤクルト・高津投手コーチ (6回まで)回の先頭を出さなかったことを評価したい。中村も緩急を使ってうまくリードしてくれた。

 ≪ヤクルト・原樹から母・美幸さんへ≫小さいときから家で弁当、洗濯をお世話になった。母の力がなければここまでこれていない。甲子園で勝てたことが母の日のプレゼントになったと思う。

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