震災後宮城勢1勝!仙台育英エース渡辺「野球で元気を」

[ 2012年8月9日 06:00 ]

<仙台育英・佐賀北>完投勝利で初戦突破し、ガッツポーズをする仙台育英・渡辺

第94回全国高等学校野球選手権大会 仙台育英8―2佐賀北

(8月8日 甲子園)
 第94回全国高等学校野球選手権大会が開幕し、1回戦3試合が行われた。第3試合では2年ぶり出場の仙台育英(宮城)が07年夏に優勝した佐賀北を8―2で破り、2回戦に進出。宮城県勢としては昨年3月の東日本大震災後、春夏合わせて4試合目で甲子園初勝利を挙げた。

 ロンドンの大舞台で躍動する偉大な先輩の姿に勇気をもらい、そして力に変えた。9安打2失点、打っても2安打2打点の活躍を見せたエース渡辺は「地元にいい報告ができて良かった。自分たちは野球で元気を与えたい」と充実感をにじませた。

 卓球女子団体で史上初の銀メダルを獲得した平野早矢香、24年ぶりに4強入りした女子バレーの大友愛は仙台育英のOG。その先輩の活躍に負けじと、東日本大震災から4度目の甲子園で、宮城県勢がはね返されてきた初戦の壁をついに打ち破った。

 渡辺は震災による津波で仙台市内の自宅が2メートル浸水して全壊。さらに津波で中学時代の友人2人を亡くし、父・正さん(48)が仙台市内で営む自動車整備工場も全壊した。「野球をやめて働こうかと考えていた」。そのときに救ってくれたのが父の言葉。「おまえから野球を取ったら何が残るんだ。家のことは気にするな。甲子園で勝利をプレゼントしてくれ」。家庭の状況が厳しいことは知っている。その中でかけてくれた父の温かい言葉が身に染みた。

 仙台育英の軟式野球部に所属した正さんもかつて甲子園を目指していた。小1で野球を始めた時から二人三脚で練習に付き合ってくれた父の夢をかなえ、勝利までプレゼントした孝行息子は「親父との約束を果たせてうれしい」と満面の笑み。三塁側アルプス席から観戦した正さんも「堂々と投げていて自分で打って楽にしましたね」と雄姿を目に焼き付けた。

 復興元年の躍進は被災地にとっては何よりの活力となる。先輩と競技は違うが、地元を愛する気持ちは同じ。復興の星となるために、仙台育英ナインが走りだした。

 ≪仙台育英 夏の出場5大会連続初戦突≫仙台育英が佐賀北との1回戦に勝利。06~08年、10年に続き夏の出場5大会連続で初戦を突破した。また、宮城勢は東日本大震災後の春、夏3大会でいずれも1回戦敗退。今回が震災後初勝利となった。

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