松坂 105日ぶり2勝!6回0/3無失点

[ 2009年9月17日 06:00 ]

<レッドソックス・エンジェルス>ベンチへ戻る松坂大輔にはファンの熱い大声援が球場中に鳴り響き、帽子を取ってそれに応えた

 【レッドソックス4―1エンゼルス】レッドソックスの松坂大輔投手(29)が15日(日本時間16日)、エンゼルス戦で88日ぶりにメジャー復帰し、4回まで無安打投球を見せるなど、6回0/3を3安打無失点。6月2日以来、105日ぶりとなる2勝目を挙げた。マイナーでのつらい夏を乗り越えた肉体から繰り出された直球は生まれ変わり、松坂がリスタートを切った。

【松坂ジャージ


 背番号18が帽子を取って応えた。地元ファンからのスタンディングオベーション。屈辱の降板から88日。松坂が戻ってきた。
 「最後の登板はブーイングの中で降板したので、ファンが称えてくれたのは選手として最高の形。プレーオフ争いで少しも余裕がない中、チームが勝てるように投げるだけだった」
 登場曲を替え、心機一転して臨んだ一戦。松坂が求め続けた答えは直球の威力に表れた。61球の直球のうち球速150キロ超えはわずか9球。それでも手元で伸びる球は球速以上だった。5回1死二、三塁での連続空振り三振も、6回1死二塁のゲレロの見逃し三振も直球で奪った。「多少コースが甘くてもファウルになったり、空振りが取れた。苦しい時にスライダーではなく、直球で取れたのは大きい。すべて使い果たしたというわけではない。余力を残して終わることができた」。すべての引き出しを開ける必要はなかった。
 「実際にビデオでフォームを見たら、感覚と大きなずれがあってがっかりした。根本から立て直す必要があり、大変な作業になると思った」。“自分探しの旅”はボストン近郊の大学の先生に動作解析を依頼することから始まった。理想のフォームを取り戻すために必要となる動きを頭の中で整理した。そして不可欠だったのは自らの目的に沿った練習を球団に容認してもらうことだった。「日本とアメリカ選手の骨格の違い、体の使い方の違いを話しても、それは米国では人種差別ととられてしまう可能性がある。自分の体を本当に理解して、首脳陣に説明する必要があった」。読んだのはトレーナー用の専門書。付せんをはり、アンダーラインも引いた。一部発言が球団批判と誤解されたこともあったが、納得してもらえるまで言葉を紡いだ。
 北京五輪ソフトボール金メダルの立役者、上野由岐子を指導した鴻江寿治トレーナーに体の使い方をチェックしてもらい、元西武ライオンズのトレーナー、舩津貢氏にも体の手入れを依頼した。早朝7時30分からのランニング。妥協のないトレーニングで体重は95キロから89キロまで落ち、腹筋は割れた。ベルト2個分の穴だけ、ウエストは締まった。一方、太腿周りは数センチ太くなった。家族がキャンプ地に来てもコンドミニアムは別棟。午後8時30分前後になると、子供たちとの別れを惜しみつつ、松坂は自室にこもった。昼間のトレーニング、そして得た知識を体に覚え込ませる作業は決まって自室の窓に向かってのシャドー投球だった。「夜は自分の姿が映せますから。何回腕を振っただろう」と振り返る。
 現在、ワイルドカ-ド争い首位のレ軍は、地区シリーズでは同地区のヤ軍を除いて最高勝率のエ軍との対戦が濃厚。その強敵を封じ込めた105日ぶりの勝利で、プレーオフの先発マウンドへの挑戦権も引き寄せた。
 「春先とは明らかに違う自分を出せた。この時間は無駄じゃなかった。今後もチームメートやファンの人たちに“感謝しています”という形を示していけたら」
 頭も体も心もすべて注ぎ込んだ。弱音ひとつ吐かずに打ち込んだ日々は間違いじゃなかった。

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2009年9月17日のニュース