花巻東が初戦突破!菊池 3発浴びても完投勝ち

[ 2009年8月13日 06:00 ]

<花巻東・長崎日大>9回2死一塁、最後の打者を空振り三振にしとめた花巻東・菊池雄星はこん身のガッツポーズ

 【花巻東(岩手)8―5長崎日大(長崎)】第91回全国高校野球選手権第3日は12日、甲子園で行われ、今大会注目No・1左腕、花巻東(岩手)の菊池雄星投手(3年)が人生初の3本塁打を許した。日米合わせて19球団のスカウトが視察する中、長崎日大戦に先発した同投手は自己最速の153キロをマークしながら、9安打5失点。奪三振もわずか5に終わった。それでも後半に打線が奮起し、8―5で辛くも逆転勝ち。7回の本盗の際に左脇腹を打撲するアクシデントもあったが、センバツ決勝で敗れた長崎県勢に雪辱。東北勢初の甲子園優勝へ、エースと花巻東は苦しみながらも、一歩を踏み出した。

【試合結果


 こんなはずじゃない…。3度もスタンドに吸い込まれていくボールを、菊池はぼう然と見送った。野球人生初の1試合3被本塁打。「清峰の今村君が(長崎大会準々決勝で)3点取られた相手。5点取られるのは想定内。でも3発も打たれるとは…」。苦笑いさえもうまく浮かばないほどに、表情はこわばったまま。味方の逆転劇には何度も左腕を突き上げた菊池だったが、マウンドでは最後の打者を空振り三振に仕留めた瞬間その一度だけだった。
 2回2死から7番・山田にスライダーを狙い打たれ、さらに6回に4番・本多晃に2ラン、8回に2番・小柳にソロをそれぞれ左翼席に運ばれた。調子は決して悪くなかった。オリックスのスカウトが持つスピードガンでは自己最速を1キロ上回る153キロを計測。しかし、ひじが下がる悪癖が顔を出し、得意のスライダーが高めに浮いた。このため「力で抑えようとしてしまった」。直球主体に切り替えれば、今度はその真っすぐを狙い打たれて9安打5失点。今後へ大きな課題が残った。
 苦闘はそれだけではない。7回に1点差に迫り、さらに1死一、三塁の場面で三走の菊池は一走の柏葉がスタートするのを見て、自らも本盗。好走塁で同点に追いついたが、クロスプレーの際にタッチにきた相手捕手のミットが左脇腹に思い切りぶつかった。息が詰まるほどの痛みを覚えた菊池はベンチ裏の医務室でアイシング治療。患部が赤味を帯びて腫れていたこともあり、骨折という最悪の事態も懸念されたが、投球練習を終えるとベンチ前で様子を見守っていた大会ドクターに自ら「OK」サインを出した。試合後には「試合中は集中して痛みを忘れていたが、今は痛い」と話したが、軽い打撲とみられ、病院には行かなかった。
 大阪入り前日の1日。慌ただしい合間を縫って母・加寿子さん(49)とつかの間のショッピングを楽しんだ。「(岩手大会で初戦敗退したシード校の)一関学院の分まで頑張って」とエールを送られると小さくうなずいた。
 「きょうはみんなが助けてくれた。10点を取られても最終的に勝てばいい。その意味では勝てたから100点」。高校最後の夏をまだまだ終わらせない。

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2009年8月13日のニュース