厳しく優しかった師匠の先代高砂親方、朝潮 朝乃山「大関に戻って、いい報告がしたい」天国へ恩返しを

[ 2023年12月31日 05:00 ]

19年6月、母校近大に凱旋し、重さ46キロの近大マグロを贈呈され笑顔の朝乃山(左)と師匠の高砂親方
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 2023年11月、先代高砂親方(元大関・朝潮)の長岡末弘さんが67歳で亡くなった。現役時代は大きな体と明るいキャラクターから「大ちゃん」の愛称で親しまれ、親方としては横綱・朝青龍らを育成。近大の後輩でもある弟子の幕内・朝乃山(29)は、約7年間指導を受けた先代への思いを語った。

 朝乃山に先代師匠の訃報が届いたのは、三役復帰目前の東前頭筆頭で臨む九州場所を前に左ふくらはぎのケガで出場可否を思い悩んでいた11月3日のことだ。「ここで無理をして出たら“しっかり治せ”と先代も怒る」と思ったと振り返る。一日も早く白星を届けたい気持ちを抑え、初日から休場を決断した。

 入門から約7年間、褒められたことはほとんどないという。初優勝した時も、大関昇進を決めた時も「おめでとう」の一言だけ。最後の言葉は、正代に敗れた秋場所14日目夜の「前に攻めないと勝てないぞ」という叱咤(しった)だった。「怒られてばかりでした。出場停止処分を受けた時も“何で怒られたのか自分で考えて反省しろ”という感じでした」

 そんな師匠との一番の思い出は、新十両だった17年春場所10日目の夜のこと。「初めて2人での食事に誘ってもらいました。3連敗して精神的に追い込まれていた時で、最初は緊張したけど、一緒にお酒を飲めてリフレッシュできました」。翌日から5連勝。怒られてばかりだった思い出の中に、優しい気遣いは存在していた。

 訃報の2日後、先代師匠と朝乃山の母校・近大が、学生選手権で下馬評を覆して団体優勝。「先代が背中を押したのかな」と見えない力を感じたという。「僕の背中も押してもらえるかな」。冬巡業から帰京した際に墓前で手を合わせ、力をもらった。「これからが大切。また大関に戻って、良い報告がしたい」。弔いの土俵は、天国から褒めてもらえる日まで続く。

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