【ラグビーW杯】早期交代、戦術変更、残り2分で逆転 勝ち方を知る前回王者・南アフリカ 4度目決勝へ

[ 2023年10月22日 10:36 ]

ラグビーW杯フランス大会準決勝   南アフリカ16―15イングランド ( 2023年10月21日    サンドニ )

勝利に貢献したポラード(AP)
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 19年日本大会決勝と同じ顔合わせとなった一戦は、史上2例目の大会連覇を目指す南アフリカがイングランドに16―15で逆転勝ちし、2大会連続4度目の決勝進出を決めた。28日(日本時間29日未明)の決勝では、ともに単独最多の4度目の世界一を目指すニュージーランドと対戦する。 試合結果(速報)

 後半38分、この試合で初のリードを奪い、わずか1点差を守り切ると、スタンドの首脳陣ですら感情をあらわにするほど喜んだ。「70分間は(勝利への)足がかりをつくり、最後まで絶対に諦めずに戦った選手をとても誇りに思う」とニーナバー監督。だがフィールドに立った23人はもちろん、緻密なベンチワークが勝利を呼び込んだ点も見逃せない。

 序盤から主導権を握ったのはイングランドだった。FBに長身のスチュワードを配し、キッキングゲームを徹底。落下点へのプレッシャーも今大会一番と言えるほどで、反則を誘ってはSOファレルのPGで3点を重ねた。南アフリカにしてみれば分かりきった戦術ではあったものの、対応は後手に。雨でボールが滑る状況で、高い決定力を誇るバックスリーも生かせないままだった。

 そうした中で、首脳陣の決断は早かった。前半31分、直前にハイパントキックでミスのあったSOリボックから19年優勝メンバーのポラードに交代。6―12で折り返した後半も11分までにSHデクラーク、FBルルー、フランカーのスミスと6人を投入した。

 そして試合の分岐点となったのが後半11分、ハーフウェーライン付近での相手ボールスクラム。ぐいっと前に出てターンオーバーすると、トライこそ逃したが決定機をつくった。その後はキッキングゲームに付き合わず、スクラムを主体に攻撃を組み立てた。残り約20分間だけで3つのスクラムペナルティーを獲得。後半28分の2つ目は途中出場のFWスナイマンのトライにつながり、同36分の3つ目はポラードの逆転PGを呼び込んだ。

 残り2分での劇的逆転までが首脳陣のシナリオにあったわけではなさそうだが、後半から入ったヌチェとコッホというスクラム職人が試合の流れを変え、前回大会得点王で前半から投入されたポラードが確実にスコアした。計算され尽くした交代策と試合運び。分厚い選手層に裏打ちされた、前回王者の最大の強みと言えるだろう。

 ニーナバー監督は言った。「ベンチから出てきた選手のパフォーマンスばかりに目が行きがちだが、先発選手のプレーがあってこそ。よく選手と話し合い、彼らも理解しているが、我々にはAチームもBチームもない」。出番の前後、出場時間の長短を問わず、23人全員で一つの勝ち星を目指す。現代ラグビーを象徴する戦いぶりで、南アフリカが連覇に王手を掛けた。

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