内山靖崇、テニス世界2桁ランカーの自覚 コート内外で続ける挑戦

[ 2020年4月29日 05:30 ]

Challenge 春――新たな挑戦

新たな覚悟でプロ10年目のシーズンを過ごしている内山靖崇
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 男子テニスで世界ランキング90位の内山靖崇(27=積水化学)は過去9シーズンと違う心構えでプロ10年目を迎えた。昨年10月に初めて世界ランキングが2桁に突入。プロ転向後からの目標をクリアし、今季は自身が主催する大会を新設してトーナメントディレクターも務める。次の目標を世界50位以内に設定し、技術面でも新たな取り組みを実施。コート内外での挑戦に迫った。

 構想を形に変えた。昨年10月21日発表の世界ランキングで初めて100位以内に突入した内山は現在も2桁順位をキープ。プロ転向直後の18歳からの目標をクリアし、故郷の札幌市で国内テニストーナメント「ウチヤマ・カップ」を新設することを決めた。北海道テニス協会との共催で、第1回は今年9月開催予定。賞金総額300万円は国内トップクラスの大会だ。自らトーナメントディレクターを務め、スポンサーや出場選手の確保も主導。コート外にも活動の幅を広げている。

 「前々から地元に何か恩返ししたいと考えていたが、成績が出ていないうちは“テニスに集中しろ”という意見が絶対に出る。100位に入ったので形にしてもいいかなと思いました。自分のキャリアで得たことを下の世代に還元したい」

 これまで全国各地のイベントに出演し、ジュニア選手とラリーなどをこなしたが、思い出づくりの側面が強く、強化に直結するのか疑問を抱いていた。トッププロを集めた大会の開催が北海道テニス界への最大の貢献になると判断。国際大会にしたい意向もあったが「運営側としては超初心者なので」と国内大会からスタートする。

 昨年10月のATP(男子プロテニス協会)下部ツアー大会・寧波チャレンジャーで通算5度目の優勝を果たし、悲願のトップ100入り。直後の同11月のプレイフォード国際では対戦相手が目の色を変えて挑んでくる中で準優勝した。「100位以内は多くの選手の一つの目標だと思う。自分が100位以内の選手をリスペクトしていたこともあり、そこに入れたことで自信が生まれました。自分もそういう立場になれたんだと実感しました」。1月の全豪オープン中にはATPのツアーマネジャーから「100位へようこそ」と歓迎を受け、記念のトロフィーも受け取った。

 技術面でも進化を目指している。17歳から師事する増田健太郎コーチ(48)に加え、昨秋から鈴木貴男コーチ(43)を招いた。「トップ選手に勝つ可能性を上げるには武器を磨く必要がある。サービスに対する考え方やバリエーション、ネットプレーを考えた時に貴男さんに教えてもらうのが一番良いと思いました」

 15~17年にはバルセロナに拠点を置き、赤土コートでストロークを磨いた。ミス減に重点を置く従来の方針からサーブやネットプレーなど長所を伸ばす練習にシフト。緊急事態宣言後は屋外練習は週2回程度で、感染予防のためにコートに入る人数も最大4人に制限している。自宅用にフィットネスバイクを購入するなど限られた環境でトレーニングを積む日々だ。

 今季の目標は世界50位以内。7月13日まで休止が決定しているツアー大会の再開時期は不透明だが、ターゲットはブレていない。「この状況ですが、五輪出場権獲得が最優先になるのは変わらない。五輪までにツアー大会でベスト4に入れる力をつけておきたい。そうじゃないと、五輪に出るだけで終わってしまう。東京で開催される五輪は特別。勝てる実力をつけて臨みたい」。4月からは所属を北日本物産から積水化学に替えた。2桁ランカーの自覚を胸に、コート内外でテニス界の発展に尽力していく。

 ≪ツアー休止で五輪代表当確ライン不透明≫テニスのツアー大会は7月13日までの休止が決まっている。5月に開幕予定だった全仏オープンは9月に延期。6月29日に開幕予定だったウィンブルドン選手権は中止となった。45年大会以来75年ぶりの中止で、戦争以外の理由では初。8月31日開幕予定の全米オープンの会場は新型コロナウイルスの患者を収容する臨時の病院となっており、通常開催できるかは不透明だ。
 東京五輪が今年開催された場合は全仏後の6月8日発表の世界ランキングで出場選手を決める予定だった。大会の1年延期とツアー大会の中断による世界ランキングの凍結で、今後の選考法は白紙。シングルスの出場枠は64だが、各国最大4人の規定や推薦枠、辞退者も想定されるため、当確ラインは定まっていない。

 ◆内山 靖崇(うちやま・やすたか)1992年(平4)8月5日生まれ、札幌市出身の27歳。小2からテニスを始め、中1から錦織圭と同じ米IMGアカデミーに留学。11年にプロ転向。13年に国別対抗戦デビス杯インドネシア戦で日本代表デビュー。19年ウィンブルドン選手権で4大大会初の本戦出場を果たした。生涯獲得賞金84万5300ドル(約9100万円)。1メートル83、75キロ。右利き。

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