走り高跳びエース“ドクター戸辺”論文でアップグレード インプット増やしコロナ苦境跳び越える!

[ 2020年4月12日 05:30 ]

東京五輪に向けた意気込みを色紙にしたためた戸辺
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 陸上男子走り高跳び日本記録保持者の戸辺直人(28=JAL)が本紙の電話取材に応じ、昨年3月に筑波大大学院で博士号を取得した“ドクター戸辺”らしい頭脳を使った独自の“在宅トレーニング”を明かした。練習拠点としている筑波大の使用が制限される中でも、海外のトレーニングに関する最新研究や論文を読み込んで知識のアップデートを実践。持ち前の跳躍力でコロナ苦境も跳び越える。 

 緊急事態宣言が発令され、ナショナルトレーニングセンター(NTC)などアスリートの練習拠点が閉鎖した。戸辺が拠点にする茨城の筑波大は対象外だが、大学グラウンドが使えなくなり影響は甚大。走り高跳びという競技の特性上、用具を使わないと本格的な練習ができないため日本記録保持者も苦しい日々を過ごしている。

 「利用に制限がかかってからは普段の練習はできていません。大学のウエート場も先月末から閉鎖しました。今は自宅でトレーニングしたり、道で軽くジョギングくらい。ジャンプ練習はほぼできていない状態です」

 昨年3月、筑波大大学院で「走高跳のパフォーマンス獲得に関わる技術要因の検討」というテーマでコーチング学の博士号を取得した“空飛ぶドクター”は自身の跳躍を分析して記録を伸ばしてきた。研究と競技が密接に関係していることを知る戸辺は、自宅にいることが多くなった今の状況を生かす方向に頭を切り替えている。現在は走り高跳びに関する最新論文を熟読。他のアスリートとは違うアプローチで再び東京五輪を目指している。

 「去年はアウトプットばかりでインプットができなかった。今は技術練習もできないので、良いタイミングと思って知識をアップデートしています。例えばこんなトレーニングをやったらこんな効果が出た、という論文を実践してみようとか思っています。ウエートならセットの組み方。どれくらいの重さで何回やって、どのくらい休憩を取ってなど、来年に向けた準備をしないといけないですから」

 もちろん体のトレーニングも怠ってはいない。腹筋などの体幹トレーニングのほか、跳躍選手にとっては欠かせないジャンプ力は縄跳びで補強している。

 「ジャンプ系は筋肉ではなく、足の腱が重要になってくる。筋肉は大きな負荷が有効だが、腱は小さい負荷でたくさんダメージを与えることが大切。普通に跳ぶだけで2分もやれば結構いい練習になっています」

 今季は2月の欧州遠征で出場した室内大会で2メートル31を記録した。6月開催予定だった日本選手権までに五輪参加標準の2メートル33を突破して代表獲得と描いていたが、6月までの競技会は中止。日本選手権は秋以降に延期となるなど、五輪プランはコロナウイルスのために崩れた。

 「トレーニング計画をもう一度考えないといけないが、僕は体幹をもう少し強くしたいという課題を感じていたので、そういうところからやっていければと思っています」

 世界陸連が今年11月30日までの記録を五輪参加標準としないことを決定した。これによって今季の記録は東京五輪には直結しないが戸辺の頭脳は来夏を見据えたシミュレーションができている。

 「日本選手権は五輪の出場権には関与しないけれど、一つの目安として2メートル33の標準記録くらい出せたら良いと思います。まずはじっくりつくり直す。今年8月に五輪があった場合よりも良い状態をつくり上げられるようにしたいです」

 ◆戸辺 直人(とべ・なおと)1992年(平4)3月31日生まれ、千葉県野田市出身の28歳。専大松戸高―筑波大―筑波大大学院。筑波大3年時の日本選手権で初優勝(2メートル22)。18年ジャカルタ・アジア大会では2メートル24で銅メダルを獲得。19年2月には2メートル35の日本記録をマーク。同年の世界室内ツアーで3連勝を飾り日本選手初の総合優勝を果たした。1メートル94、74キロ。

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