「月曜日の朝を笑顔にしよう」NTTコムの新たな試み

[ 2018年5月2日 11:00 ]

アークス浦安パークのメイングラウンド。後方はクラブハウス。ラグビートップリーグ
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 あらゆる面で、本気度を感じることができた。

 4月24日、ラグビートップリーグのNTTコミュニケーションズが、千葉県浦安市に完成した新拠点「アークス浦安パーク」の完成披露会を行った。公開されたのは国際規格の天然芝グラウンド2面や、室内練習場、トレーニングルーム、各種のコンディショニングルームを含む総2階建てのクラブハウス。そのクラブハウス屋上に設置されたカメラでは、親会社の得意分野と言えるICT(情報通信技術)を駆使し、選手の走行距離などを計測できるという。

 見えないところ、細かいところにも工夫が施されている。例えば当日、案内役を務めてくれたフランカーの目崎啓志によれば、約3万8000平米に及ぶ敷地には長さ50メートルの杭基礎を50本以上も打ち込まれており、クラブハウスやグラウンド地盤を支えているという。新浦安と言えば、11年3月の東日本大震災時に液状化が問題となった土地。万が一の備えも万全だ。また、ロッカールームは選手の意見を取り入れ、長方形の室内の壁4面だけにロッカーが設けられている。死角が一切なく、選手間のコミュニケーションは一層増すだろう。それが積み重なり、試合で好結果を生む。メジャーリーグのロッカーを参考にしたというそんな作りが、いつか成績に結びつくかもしれない。

 ただこの日、グラウンドや施設以上に印象に残ったのが、内山浩文ゼネラルマネジャー(GM)の発した言葉であることを付け加えておきたい。

 「月曜日の朝を笑顔にしよう」

 NTTコムが新拠点を使用して新たに試みるのが、施設の地元市民への開放だ。構想では週末にグラウンドの一部やトレーニングルームを開放し、現役の選手が講師役を担うという。敷地の北西部分には、芝養生スペースを兼ねるグラウンド1面の約4分の1ほどのミニグラウンドがある。ラグビーだけにこだわらず、あらゆるスポーツで体を動かしてもらうことも可能だという。

 こうした地元への還元のためのキーワードが、内山GMの発した言葉だった。官民のあらゆる調査で明らかだが、日本における自殺率は曜日別で月曜日が最も高い。同GMも「サザエさん症候群」という言葉を引用して、この状況を憂う1人。土日に体を動かしてもらい、心身ともにリフレッシュして月曜日から職場へ学校へ。実際に開放を利用できる人は、日本国民という分母を考えればごくごくわずかだろうが、このコンセプトには非常に共感を覚えた。

 地元住民やファンとの交流会を行うトップリーグや大学のチームは多々あるが、ここまで踏み込もうとするチームは少ない。チームや選手の活動に支障を来すようでは本末転倒だが、そのラインを見極めつつ、どこまで地元に還元できるのか。19年W杯後に移行予定のトップリーグネクスト(仮称)は、地域密着を掲げており、この点でも相乗効果が生まれるだろう。NTTコムの新たな試みに今後も注目したい。(阿部 令)

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