奨菊7度目カド番しのげず…大関在位32場所で陥落「これが今の力」

[ 2017年1月20日 05:30 ]

大相撲初場所12日目 ( 2017年1月19日    両国国技館 )

琴奨菊(左)は玉鷲に押し出しで敗れて負け越し
Photo By スポニチ

 7度目のカド番で今場所を迎えていた大関・琴奨菊(32=佐渡ケ嶽部屋)が関脇・玉鷲に敗れ負け越しが決まり、大関から関脇への陥落が決まった。昨年初場所で日本出身力士として10年ぶりに優勝。しかし、その後は両膝などの故障に悩まされていた。2場所連続負け越しで降格する制度になった1969年名古屋場所以降、13年九州場所の琴欧洲以来、16人目の降格。3月の春場所で10勝すれば大関に復帰できる。

 一礼して下りた土俵下で、しばし目を閉じた。脳裏に浮かんだのは、1年前の優勝パレードか、それとも新入幕で張り切っていた10年前の初場所か。支度部屋の風呂に入ると「あー、くそっ!」。大関から陥落した琴奨菊は風呂から上がると、再び目を閉じて座った。

 急激に力を付けている玉鷲の強烈な右喉輪をまともに食らった。左も差せず、電車道で持っていかれた。今場所の不振を象徴するような一番。7敗目の崖っ縁で迎えた11日目の鶴竜戦は、相手の休場で不戦勝。丸1日、心身を再調整して臨んだが、その幸運も生かし切れなかった。それでも吹っ切れたように目を開くと再度、大関の地位に向かう意思を前面に出した。

 「まあ、これが今の力だと思う。まだ場所中だし、気持ちを切り替えてやるべきことをやろうと思うし。負けて終わりじゃない。やめたら終わり。最後まで集中してしっかりやりきりたい」

 1969年7月から、降格直後の場所で10勝以上を挙げれば大関に復帰できる制度ができた。これを適用して“再大関”に成功した例が4人で5回ある。05年初場所で11勝を挙げて大関復帰を果たした元栃東の玉ノ井親方は「高い。土俵際で体が伸びあがっている。満身創痍(そうい)だろう」と琴奨菊の状態を気遣いながら話した。13日目から途中休場の選択肢もあるが、「土俵の感覚を整えて、挑戦者の気持ちで行った方がいい」と残り3日間の出場も勧めた。

 連敗中は国技館内で取組を見る場所を毎日変えるなど、崖っ縁の弟子を見守ってきた佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は「落ちるのは恥ずかしいことじゃない。はい上がる方が格好いいじゃないか」と来場所へ向けて鼓舞した。

 4年前の1月19日は二所ノ関一門の先輩、元横綱・大鵬の納谷幸喜さんが死去した。琴奨菊は朝稽古で「自分の相撲を見せられたら」としみじみ語っていたが、現実は厳しかった。先代師匠の元横綱・琴桜は大関在位32場所で横綱になったが、琴奨菊は史上10位タイの同じ32場所を務めて降格となった。このままでは先代や大鵬に顔向けできない。立て直して再昇進へ、がぶるだけだ。

 ▼八角理事長(元横綱・北勝海)琴奨菊は原点に戻り、一からぶつかり稽古で馬力を取り戻してほしい。

続きを表示

この記事のフォト

2017年1月20日のニュース