デメリット多いトップ選手の五輪ゴルフ出場 名誉だけが報酬では…

[ 2016年7月6日 10:00 ]

五輪不出場の松山英樹

 五輪開幕1カ月を切り、男子プロゴルファーの「選択」がクローズアップされている。世界ランクトップ10のうち、五輪不出場を打ち出しているのは7月4日現在で4人。ジカ熱や治安問題など、環境に対する不安を理由に挙げる一方、やはりプロゴルファーが「五輪」という舞台に意味を見いだせないということも理由の1つとして否定できないだろう。

 プロツアーが確立している競技のアスリートにとって、五輪という舞台が魅力的に映らないのは当然だ。莫大な賞金が出るわけではない。肖像権など制約はあまりに多く、スポンサーに対するサービスもままならないうえ、見返りも期待できない。ついでに言えば、選手村などはトップ選手が宿泊するレベルのものとはほど遠い。まして、五輪前後もビッグタイトルは世界各地で行われる。国を代表して戦うという名誉のためだけにトップコンディションを作り上げるのは、メリットよりデメリットの方が多く、理に適っていない。

 その一方、競技を統括する団体にとって、五輪競技入りはメリットの方が圧倒的に多い。例えば業界を超えて、世界規模でファンを獲得できる可能性がある。それにともない、競技を取り巻く市場が今以上に発展していく可能性もある。国際オリンピック委員会(IOC)からは、放映権料など莫大な収益の分配が待っている。競技を発展させていく、という競技団体本来の目的からすれば、特にデメリットはないのだ。

 アスリートとそれを統括する競技団体との相反するメリットとデメリットというゆがみは、実は五輪が「アマチュア規定」を捨て、スポーツのトップ・オブ・ザ・トップの祭典を目指したときから、出るべくして出た課題だ。この問題、20年東京で追加種目入りする可能性の高い野球だけでなく、サーフィンやスケートボードでも噴出する可能性は高い。では、どう対処すべきか。

 個人的には、カギを握るのは競技団体やアスリートではなく、IOCだと考えている。「魅せるスポーツ」を取り込み、スポーツの評価の一部として視聴率すら取り入れてきたのは、IOC。商業ベースの拡大がベースにある以上、選手への報酬が「名誉」だけでは。ゆがみが解消されないのは当然だと思うのだが、どうだろう。(首藤 昌史)

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2016年7月6日のニュース