「ずっと会いたかった」白鵬 心臓移植手術支援した少年の手紙に涙

[ 2015年12月9日 05:30 ]

土俵上で白鵬への手紙を読む水流添日向くん

 大相撲の鹿児島・霧島巡業が8日、霧島市国分体育館で行われ、横綱・白鵬(30=宮城野部屋)が50万人に1人の確率で発症する難病「拘束型心筋症」を抱えていた同市出身の水流添日向(つるぞえ・ひなた)君(8)と念願の初対面を果たした。2年前に日向君の家族と出会い、米国での心臓移植手術のために必要な1億4500万円の募金呼びかけに協力。昨年7月に手術を成功させて帰国した日向君から土俵上で感謝の手紙を読まれ、横綱の目には涙が浮かんだ。

 白鵬の瞳が濡れた。心臓移植手術を行い、難病を克服した日向君と初対面を果たした土俵上。普段は医師から義務づけられているマスクを外した小学3年生から大きな声で励ましの言葉をもらった。「僕はずっと会いたかったです。相撲頑張ってください」。花束と手紙を受け取った横綱は思わず日向君の頬にキス。「初めて会って泣きそうになりました。元気な姿を見てホッとした。礼儀正しかったのが良かったね」と敬意を示し「世界で活躍できる大人になってほしい。その中で少し大相撲を忘れないでいてくれればいいのかな」とエールを送った。

 交流は2年前の11月から始まった。宮城野部屋の九州後援会が霧島市にあった縁で、白鵬は09年から同市の観光大使を務め、その年も訪問。その際に前田終止(しゅうじ)市長から日向君の存在を紹介された。以来、米国で心臓移植を受けるための1億4500万円の募金呼びかけを開始。ブログで紹介したり、子供相撲大会「白鵬杯」の会場では自ら募金箱を持った。そして29歳の誕生日の昨年3月11日に目標金額を達成。ひなた君を救う会の吉原敏樹代表は「最後の1カ月で一気に8000万円が集まった。横綱のおかげで全国的に知られた」と説明した。昨年7月に手術は成功し、現在は持久走に出場できるまで回復。これまでは日向君の心臓に負担をかけないために面会は実現しなかったが、この日ついに念願がかなった。

 初対面後、日向君は自らの夢を「お母さんの頼りになりたい。お母さんとパン屋さんになりたい」と言った。女手一つで日向くんと兄3人を育てている母・二三代(ふみよ)さんはそれを聞いて目に涙。この日の出来事について白鵬は「徳を積むということはできそうでできない。一つ一つの積み重ねが花を咲かせるんだね」と振り返った。子供の言葉から大人は多くのことを学ぶ。3児の父親である横綱の胸にもまた一つ新たな実感が押し寄せた。

 ▽拘束型心筋症 心室の壁が硬くなり十分に膨らむことができない原因不明の難病。50万人に1人の頻度で発症する。突然死のリスクも高く予後不良の病気であり、有効な治療法はないとされる。悪化した場合の唯一の救命手段は心臓移植のみとされている。

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