東京五輪「若者へのアピール」最大のテーマも…選考委員は60代以上

[ 2015年8月11日 09:30 ]

今月7日、東京五輪の追加種目検討会議後の会見で取材に応じる世界少年野球推進財団の会長を務める王貞治氏(左)

 20年東京五輪の追加種目選定が大詰めを迎えている。最終候補に残った8種目のうち、ちまたの予想では野球・ソフトボールは当確、空手は有力で、この2種目が東京五輪で開催されることはほぼ間違いない。

 今回の選定を担当する大会組織委員会の種目追加検討会議は一貫して3原則に基づいての選考を強調してきた。3原則とは(1)若者へのアピールを中心に五輪ムーブメントとその価値を推進するものであること(2)日本の機運を高め世界中の新たな聴衆を巻き込むことにより大会に付加価値をもたらすもの(3)選考は開かれた公平なものであること、の3つである。このうち特に国際オリンピック委員会(IOC)と組織委が最大のテーマとしてきたのが(1)の若者へのアピールだ。

 五輪をさらに発展させるためには若者の参加が欠かせない。世界的に若者のスポーツ離れが伝えられる現状ではなおさらだ。伝統墨守の既存の種目だけではなく、若者への啓発を目的に新しいスポーツを取り入れようとするIOCの姿勢は正しい。だからこそ、あえて今回の選定で疑問を呈したいことがある。「それならなぜ選考委員に若者がいないのか」だ。

 種目追加検討会議は7人で構成されているが、年齢構成は60代が2人、70代が5人となっている。御手洗冨士夫座長(日本経団連名誉会長)は79歳。武藤敏郎座長補佐(組織委事務総長)は72歳。つまり、「若者へのアピール」を掲げていながら、実際に若者のことが分かっている同世代の人間は1人もいないのだ。おそらくサーフィンやスポーツクライミング、ローラースポーツなどは見たこともないし、ルールも知らないだろう。それでどうして「公平な選考」ができるというのか。

 メンバーに若者がいないのなら、それこそ事前に若者への大々的なヒアリングを行うべきであり、わずか数回の会議、それも書類選考とたった1回のヒアリングだけで決めるような話ではないはずだ。先に野球・ソフトボールありきと変に勘繰られないためにも、万人が納得する公明正大な選考を期待したい。 (藤山 健二)

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2015年8月11日のニュース